
ツバキ文具店
小川糸
2016年4月21日
幻冬舎
1,540円(税込)
小説・エッセイ
ラブレター、絶縁状、天国からの手紙…。鎌倉で代書屋を営む鳩子の元には、今日も風変わりな依頼が舞い込む。伝えられなかった大切な人への想い。あなたに代わって、お届けします。
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(無題)
代書屋って行政文書を作成するのが苦手な人に代わって文書を作成する人のことでしょ。今時は代書屋じゃなくて、行政書士の看板につけ変わっているかな。でもね、戦後進駐軍の兵士と恋に落ちた女性のために英文の恋文の代筆を請け負った代書屋もあったのね。これが渋谷の恋文横丁。 本書は鎌倉で代書屋を営む若い女性の物語である。 今時、そんな商売が成り立つのかなぁと思いながら読み進めると、なるほど代書屋でメシを喰っていけるのである。結婚披露宴の案内状の毛筆宛名書き、あれが代書屋の仕事なんだって。確かにそれはアリだわ。それを踏まえて、本書の代書屋は一味も二味も違う味わいを作り出している。単なる代筆ではないのだ。依頼主の思いを汲み取り種々の手紙を書き分ける。しかも文面ばかりか書体から用紙、筆記具も内容に似合ったものを選び依頼主に応えるのだ。 本書に登場する第1の代筆は、お悔やみ状。これは当然の事ながら巻紙に墨書。しかも墨の色は通常より薄くする。ま、この辺は冠婚葬祭の常識の内かな。次いで離婚のお知らせ。上質なレターセットで知られるクレイン社のコットンペーパーに活版印刷の横組みである。封筒の宛名書きはグレーのインクで万年筆書。さらにシーリングワックスで封印。ここまでやれば、受け取った人は普通「何事か」と思うだろう。その次はかつての恋人に近況を伝える親書。使われる筆記具はガラスペン。セピア色のインクでベンギー製のクリームレイドペーパーにサラサラと書き上げる。防水加工された封筒に油性マジックでしっかりと宛名書きすれば完璧。こんな感じで、借金申し込みを断る手紙やら義母への還暦祝いのメッセージカードなどにまつわる物語が紡ぎ出される。こうなると、代書や代筆と言った範疇を超えている。専門的知識とセンスを駆使した総合プロデュース業だな。文化的な香りが漂っているものね。 そう、そんな文化的な雰囲気をさらに濃厚にさせているのが、古都鎌倉を舞台に設定している点だ。鎌倉には観光地でありながら、文人墨客の住む文化都市のイメージが備わる。固定資産税や物価が高く、道路が狭くて駐車場が少ないので決して住みやすい街ではないのだが、住んで見たいと思わせる何者かが確かに存在する。本書では住民視線で地元ネタがふんだんに盛り込まれているので、それも魅力のひとつだろう。 最後にもう一つ。本書には正体不明の人物が多数登場する。ボーイフレンドと海外旅行にも行く上品な老婦人、ツバキ文具店の隣人にして完全な日本人でありながら、何故かバーバラ夫人。着物や帽子を粋に着こなす偉丈夫・男爵。パンを焼くことが趣味のティーチャーでパンティー。見た目そのままのQPちゃんとその父親。そして何より主人公・ぽっぽちゃんこと雨宮鳩子の素性が最後まで明かされない。本書はこれらの人々が織りなす鎌倉歳時記と言った内容だが、全体に通底するしっとりとした雰囲気が読者を魅力する。
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sai。m(_ _)m
あれ?
確か読んだはずなのに、 評価つけるの忘れてた? そこそこ面白かったと言う記憶だけはある。
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