料理通異聞

松井今朝子

2016年9月30日

幻冬舎

1,760円(税込)

小説・エッセイ

天明二年。江戸は大地震に見舞われた。まだ騒然とした空気が残る中、料理屋の跡取り善四郎は御金御用商・水野家で、料理に関係のない奉公生活を続けている。家人たちの様子から、善四郎はうっすらと自らの出生の秘密を感じ取っていた。困っている者を見ると放っておけなくなる性分から関わった貧乏旗本の娘・千満との初恋は実らず、傷心を抱えながら赴いた評判の料理屋で偶然身分の高そうな若い侍と知り合う。これが姫路藩主の次男、後の酒井抱一との出会いであったー。亀田鵬斎、大田南畝、酒井抱一、谷文晁ーそうそうたる時代の寵児たちとの華やかな交遊、そして、想像をかき立てられる江戸料理の数々-相次ぐ天災と混乱の時代に、料理への情熱と突出した才覚で、一料理屋を将軍家のお成りを仰ぐまでにした男の一代記。

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(無題)

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3.1 2020年09月06日

和食が欧米人の間で大変なブームだとか。彼らにどんな料理かと問い掛ければ答えは決まって「スシ、テンプラ、スキヤキ」である。これに加えて蕎麦、鰻重とくれば、外人どころか日本人誰もが大好きな料理だ。ところで、これらの料理には一つの共通点がある。それは江戸時代に江戸の街中で始まったということだ。それは偶然ではなかった。関東で香り高い濃口醤油と上質な味醂が作り出されるようになったからである。甘塩っぱい味付けは、肉体労働を伴う江戸の職人の好むところであった。庶民の食べ物であるから、屋台で供された。男性人口が女性人口を上回っていた江戸の街が生み出した外食文化である。 このような一品料理に対してコース料理とも言える会席料理はいつどのようにして生まれたのであろうか。それは、やはり江戸時代であった。連歌や俳諧の会席であった料理茶屋 で本膳料理を省略した宴席の料理としての会席料理が発展したのであった。文化・文政期、浅草山谷の「八百善」と浮世小路の「百川」が高級料亭の双璧であった。本書は八百善の実質的創業者・4代目栗山善四郎の物語である。これらの料理茶屋には酒井抱一を始め大田南畝、山東京伝、谷文晁といった名だたる文人たちが足繁く通い、文人サロン的な役割を果たしたのであった。無論これらの人々も本書に登場する。

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