けむたい後輩
幻冬舎文庫
柚木麻子
2014年12月31日
幻冬舎
638円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
14歳で作家デビューした過去があり、今もなお文学少女気取りの栞子は、世間知らずな真実子の憧れの先輩。二人の関係にやたらイラついてしまう美人で頑張り屋の美里は、栞子の恋人である大学教授に一目惚れされてしまうー。名門女子大を舞台に、プライドを持て余した女性たちの嫉妬心と優越感が行き着く先を描いた、胸に突き刺さる成長小説。
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(無題)
現代女性の感性を描かせたら、この人の右に出るものはいない。若者言葉を駆使して、見事に現代女性の雰囲気を創り上げる。年寄りには時々、意味が分からない言葉が登場するのがたまにキズだ。もう1つ、この作者を語るとき避けられないのが女の恐ろしさ、怖さである。 本作の主要登場人物は女子大生。モラトリアムから大人の女へ脱皮する微妙な時期の女たちを描き出している。天真爛漫で汚れない少女のような女の心の闇や、早熟で世の中を斜に構えて見るポーズを取り続ける女の心の中を裸にしてみせる。 僕らの世代では青春小説が扱うテーマは「生き甲斐」であったり「生きる目的」であったりしたものだが、今時はそんな直接的な言い方はしない。では、今どきの若者はどんな言葉を使ってこのテーマに迫ろうとするのだろうか。それは「居場所」である。そこには生を否定的に捉えるニュアンスは存在しないし、自らを相対的に規定しようとの姿勢がうかがえる。 同世代の女性が「あ、それ、ある」あるいは「分かる、分かる」といった読み方が、本作を一番美味しく味わう方法だと思われる。おじさん、あるいはおじいさんには、こういう楽しみ方は絶対にできない。せいぜいが「若い女性はこうなのか」、「そんな風に感じるんだ」程度であろう。だから、伺い知ることのできない女子の世界を覗き見したいとの欲望を持つ向きは、一度読んでみてはいかが。
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