伊藤くんA to E

伊藤くんは、なぜモテるのか】 美形で実家がお金持ちで博識。 でも、自意識過剰で無神経。 人生の決定的な局面から逃げ続ける喰えない男、伊藤誠二郎。 この男を作り出したのは、私だった。 **いいセンスを持ってるね。ここにいる子たちと全然違う。 **伊藤君みたいな人ってある日、突然花開くんだよね。 **すごく、本や映画に詳しいね。見どころがあるな。 **社会人やりながら執筆してプロを目指す人もいるけれど、ほとんどがすぐ挫折しちゃうんだよね。毎日の忙しさの中に流されて、睡眠時間を削って、気力を振り絞って書き続けられる人は本当に稀。私には無理だな。 八年かけて、じんわり暗示をかけて伊藤を完成せた。 恋をすることも、何かになることも、諦める事さえまともにできない正真正銘のクズ。 それが彼。 彼こそが私の渾身の力で仕上げた代表作。 私には彼が必要。 彼にも私が必要。 彼の人生がいっこうにはじまらないのを確認するたび満足する。 こんな男のどこがいいのか。 彼の周りにはいつも女の子がいる。 A:都合のいい女（五年間も尽くしつづけてきた美女） B:自己防御女（伊藤にストーカーされるフリーター） C:愛されたい女（親友が好きな伊藤を寝取る） D:ヘビー級処女（三年間片思いをした伊藤に処女は重いとフラれる） そして、私。 E:崖っぷち脚本家（伊藤がシナリオスクールに通う） 伊藤に振り回され、無様な姿をさらす彼女たち。 それでも、彼を諦めきれない。 そんな女の子たちを見て伊藤は更に助長する。 なぜ伊藤なんだ。どうして俺じゃ駄目なんだ？ きっと世の中の男性陣は心の底から思うだろう。 このクズのどこがいいんだと。

C,Dは結構リアルな女子の心の中なのかなと思った。Eが一番読み応えはあった。