
死にたい老人
幻冬舎新書
木谷恭介
2011年9月30日
幻冬舎
924円(税込)
小説・エッセイ / 人文・思想・社会 / 新書
もう充分に生きた。あとは静かに死にたいー。83歳の小説家は、老いて身体の自由がきかなくなり、男の機能も衰え、あらゆる欲望が失せ、余生に絶望した。そして、ゆるやかに自死する「断食安楽死」を決意。すぐに開始するや着々と行動意欲が減退、異常な頭痛や口中の渇きにも襲われ、Xデーの到来を予感する。一方で、テレビのグルメ番組を見て食欲に悩まされ、東日本大震災のニュースにおののきつつも興味は高まり、胃痛に耐えられず病院に行く。終いには、強烈な死への恐怖が!死に執着した小説家が、52日間の断食を実行するも自死に失敗した、異常な記録。
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(無題)
本書は新書であることもあって、死にたがる老人が社会の中に一定数いて、そんな彼らを取材したルポものと思い込んでいましたが、死にたがっているのは本書の著者・木谷恭介であって、著者は死に至る記録を本書に残そうとしているんですね。 生の終わりをどのような形でむかえるかは人様々ですが、83歳の著者はそれを自分の意志に基づくものとしたい、として断食安楽死を選択しました。若い人から見れば、年寄りの世迷言、何を馬鹿なことを言っているんだ、と思うでしょうが、人間、老齢期に入ると人生の終焉について考えるのは、割と自然なことなんですよね。かく言う私も自分の死についてのイメージは、著者と同じです。かつて天台宗の修行僧が目指した即身成仏も、このスタイルですし、行き過ぎた延命治療の実体を見るにつけ、限られた医療資源はもっと効率的に使われるべきだと思います。 著者はこの死に方を安楽死としていますが、私は自然死だと思っています。それは、実行のタイミングに関するイメージが大きく違っているせいだと思われます。私は命の炎が燃え尽きようとする数週間前になって実行すれば良いと思っています。そんなタイミングがどうして分かるんだ、とのツッコミがありそうですか、これも日頃から感性を磨いて敏感になれば分かるものだと思います。この著者の場合、83歳の誕生日を期して38日間に渡って断食を続けたにもかかわらず、結果的に中断を余儀なくされされました。これはやはり実行するタイミングに無理があったように感じます。 まあ、本書はそれだけの話なんですが、正直言って断食の記録よりも、そんな考えに至る経緯や著者の半生、信条に触れた部分の方が面白かったですね。この部分は、著者が戦前・戦中・戦後・高度経済成長後という4つの時代を生きて、時代とともに価値観・倫理観が変わっていく様が述べられています。また、官僚主導政治を打破することをマニュフェストに掲げた民主党に期待しましたが、政権交代後、国民の期待を裏切る民主党に対する不信感が決定的なものになった、とも述べています。 もうひとつ、著者はどうしてここまで死にたがるのかとの疑問を持つ人は多いでしょうね。これについては、本人が次のように書いています。『「総理経験者は総理をやめたあと、政界から引退する」という前言を簡単に撤回した鳩山由起夫のようにはなりたくない。公言したことに責任をもち、命まで賭けたバカがいたことを立証したい』。自分の死によって、木谷は現代版の『楢山節考』を書こうとしたのでしょう。
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