人間の死に方

医者だった父の、多くを望まない最期

幻冬舎新書

久坂部羊

2014年9月30日

幻冬舎

858円(税込)

美容・暮らし・健康・料理 / 新書

医者は、どう死ぬのか。どう親の死を看取るのか。医療嫌いを徹底した著者の父が、87歳で果たした超絶オモロイ幸福死。

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【これは『死に方』の教科書だ】

starstarstarstarstar 5.0 2017年06月20日

介護職に就いて一年ちょっと、長生きと死に方について考えていた事がズバリ! 1.周りの若者から好かれた方が生きやすい。 「長幼の序」は死語。威張って好かれる事はないですよ。 正しい接し方を身に付ける必要があります。 「満足力」と「感謝力」は重要です。 2.どう死ぬかを考える 元気なうちから準備が必要。 長生きしてから考えるのでは遅い、 3.苦痛を伸ばされるだけの医療はお断り 伸ばすのは「健康寿命」であって、延命措置で苦痛を伸ばすのではない。受ける医療を決めておこう。 死に方を考えてもらうために、推薦できる「教科書」です。

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstar 3.0 2018年01月24日

久坂部羊は現役の医師でありながら二足の草鞋を履く作家です。医師であるが故の知識・経験・洞察をフル活用した作品は、人間の生と死に迫る、まるでナイフのような鋭さがあります。渡辺淳一亡き後、医師兼作家といえば久坂部羊と海堂尊が双璧ですね。海堂の作品は良くも悪くも現代的で、軽いノリのエンタメ性が強いところに一番の魅力があります。それに対して、久坂部作品は海堂に比べて派手さはありませんが、その分リアルで重いテーマと四つに取り組む真摯な姿勢が色濃く滲みます。 本書はそんな真面目一方な久坂部の父親が87歳で亡くなるまでの顛末を記録したものです。それがまた、現代医療の常識を無視したトンデモない話ばかりなんですね。お父さんだって元麻酔科医なんですよ。紺屋の白袴、医者の不養生を地でゆく、いや不摂生ではなくてむしろ積極的な医療否定主義者なんですね。この人がどれくらい破天荒は医師であったかを紹介しますね。いや、彼が医師として破天荒であったのではなく、自らの病気の治療にとった態度が医療の常識をはるかに踏み外していたのです。 30代の頃に糖尿病と診断され、しばらく食事療法はしたものの、効果がないのですぐに止め、以後全く治療をしたくなりました。カロリー計算なども一切せず、血糖値も、検査さえしなければ気にならないと言う独自の理論で、ほったらかしにしていたのです。インシュリンの自己注射を始めてからも、饅頭やケーキは食べ放題、コーヒーには必ず砂糖3杯で、タバコも1日20本と言う不節制ぶりでした。そのため、糖尿病の合併症で左足の指が2本、壊死になり、指先が真っ黒になりましたがそれでも病院にいかず、自分で勝手にインシュリンの量を増やすという無謀な方法で、自然治癒させてしまったのです。 また、85歳で前立腺がんの診断を受けたときには「しめた!、これで長生きせんですむ」と喜んだ人なのです。この一言から分かるのは、肩肘張らずに上手に生き、見事に死んでいった人だということです。この本は1人の人間の生き様や死に様を綴ったものですが、一種の爽快さと温かさを伴って読み終えることができるのは、もちろん久坂部の父親に対する愛情がベースにありますが、やはりお父さんの生きる事の達人ぶり、死に上手さにあるのではないでしょうか。 このお父さんの座右の銘が 小欲知足(足を知れば心は満たされる) 莫妄想(不安や心配は妄想だから、しなくてよい) 無為自然(余計な事はせず、自然に任せるのが良い) だといいます。含蓄に富んでいますね。僕などは二番目の漠妄想の楽観主義には、思わず拍手を送りたくなります。今の時代は寿命がどんどん伸びる反面、枯れた生き方や人生を上手に終えるのが難しくなっています。誰しもが人に迷惑をかけずにピンピンコロリと死んでいきたいと願っています。しかし、そんな望み通りに行くわけがありません。多かれ少なかれ要介護状態が万人に訪れるのですが、そのことに対するイメージトレーニングができていません。いや、正直なところは考えたくないのかも知れません。ですから、不調を感じて病院を受診し、あれよあれよという間に医療を施されて気が付いたら死んでいた、これが死を迎える多くの人の実態なのかも知れません。 漠妄想に関連してもうひとつ。老齢期に入る人生のリスク要因として一番大きなものが認知症です。この事に対して著者は、加齢とともに頭脳の能力が衰えるのは身体能力の衰えとともに当たり前のことであり、逆に頭がクリアであると老齢による能力の低下が脳に与えるダメージがきつく、苦しい思いを多くする事になるので好ましくない、と言うのですね。こう聞くと気が楽になります。漠妄想、無為自然には多くに知恵が詰まっています。

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