エドガー=A(アラン)=ポー

新装版 人と思想 94

佐渡谷 重信

2016年4月1日

清水書院

1,320円(税込)

人文・思想・社会

ポーの生涯は悲惨をきわめた。しかし、その悲惨の本当の姿を知る者は少ないのである。その悲惨さは純粋に生きようとすることから生まれたものであれば、私たちは“生”の不条理を嘆かざるを得ない。しかも、ポーは一九世紀前半の政治的にも、知的にも未熟なアメリカ社会の中で、知のために生きるより“愛”と“美”のために生涯を捧げた。金銭のために死ぬことよりも“愛”のために死ぬことを喜びとしたのである。人生は偉大な闇である。偉大なる闇の中にこそポーの芸術が“神霊”の光を放って、われわれの魂の中に浸透するとき、誰もが寂寞の感にうたれるであろう。ポーの生涯と、その芸術の真髄を知る者のみが己の人生を語る資格を手にするのである。そしてポーの生の苦悩と愛の彷徨は人類の永遠のアポリアでもある。

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