ヴァレリー

科学の急速な進歩に人間の心と精神が追いつけなくなっている現状は誰の目にも明らかで，もしヴァレリーが生きていたら何と言ったであろうか。彼はすでに一九一九年に「精神の危機」を発表し，技術偏重によって商品化した科学を指弾して，人類に警鐘を打ち鳴らしている。ところが人間は彼の警告を無視して突っ走り，彼が恐れていたような今日の危機を招いてしまった。どうすれば私たちは正しく機能する精神を復活させ，人間性を取り戻すことができるだろうか。今こそヴァレリーを読み，彼から学ぶべきである。 目次（内容と構成） はじめに 序章　栄光の実像と虚像 　　　フランス第三共和国とともに 　　　日本人の中のヴァレリー 1　ヴァレリーの家系 　　　イタリア系フランス人 　　　エディプスーコンプレックスとヴァレリーーコロニー 2　青春時代と沈黙の二〇年 　　　青春の迷いとよき友 　　　「ジェノヴァの夜」と沈黙の二〇年 3　「ジェノヴァの危機」と自己革命 　　　自己革命とその成果 　　　あくなき厳密さー「レオナルド・ダ・ヴィンチ方法論序説」 　　　頭脳人間テストー「テスト氏との一夜」 　　　自力本願と他力本願 4　精神の日記『カイエ』 　　　精神活動の忠実な記録 　　　人間精神の小宇宙 　　　ヴァレリーの言語観 5　デカルトへの傾倒 　　　当時の思想状況 　　　安全性への欲求 　　　ヴァレリーの宗教観 6　ヴァレリーの科学思想 　　　数学・物理学とヴァレリー 　　　科学哲学者ヴァレリー 7　ヴァレリーの政治思想 　　　名声と批判と 　　　政治的遺書『純粋および応用アナーキー原理』 　　　終わりに臨んで あとがき 年譜 参考文献 さくいん