星がひとつほしいとの祈り

実業之日本社文庫

原田マハ

2013年10月31日

実業之日本社

660円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

売れっ子コピーライターの文香は、出張後に寄った道後温泉の宿でマッサージ師の老女と出会う。盲目のその人は上品な言葉遣いで、戦時中の令嬢だった自らの悲恋、献身的な女中との交流を語り始め…(「星がひとつほしいとの祈り」)。表題作ほか、娘として妻として母として、20代から50代まで各世代女性の希望と祈りを見つめ続けた物語の数々。

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(34

starstarstar
star
3.66

読みたい

46

未読

31

読書中

13

既読

271

未指定

166

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー (1)

とも

(無題)

starstarstar
star
3.2 2018年01月26日

原田マハが言葉で創り出した虚構の空間に身を置くことに、心地良さを感じる。何故気持ちが良いのか、私が今居るのは、知的好奇心が刺激されたり、展開が予想出来ないドラマチックな物語に胸を踊らさせたり、人間だけが持つ心を揺さぶる場所なのである。本書が創り出す空間は、旅や母娘関係、女の性などをインテリアアイテムにした落ち着いた雰囲気のリビングと言って良いだろう。原田マハの作品はたとえどんなジャンルであっても、魅力的だ。こんな感情を「好き」あるいは原田ファンと言うのだろう。 本書は七篇からなる短編集である。どれもが深い味わいを持つが、個人的好みを表明することが許されるなら「長良川」を第一にあげたい。結婚を間近に控えた娘と母が娘の婚約者をともなって長良川の鵜飼見物に行くお話である。このお話は実は不器用ではあるが真っ直ぐに生きた父親と、夫を支える事と子育てに人生の大半を費やした初老の夫婦の愛情物語である。また、最後に収録された「沈下橋」も儚くてやるせない。やはり旅情をそそる四万十川が舞台となり、ここでの母娘は血のつながりがない。わずか四年の同居生活、別れて10年も経った義理の娘から助けを求められた母がそれに応じる。静かに黙って全てを受け入れる母親は、あたかも日本の大地のようであり、故郷をイメージさせる。 最後に冒頭の一編「椿姫」にも触れておきたい。この題名からは誰しもがオペラ椿姫を思い浮かべるに違いない。それはサブタイトルがデュマの原作La Dame aux camelias(椿の花の貴婦人)ではなく、オペラの題名La traviata(道を踏み外した女)となっているところからも明らかである。高級娼婦ヴィオレッタの毎日がパーティーの日々、そんな華やか舞台と裏腹にこのオペラは、実は愛する人の為に自らが身を引くというヴィオレッタの純愛物語である。著者がこの作品で「道を踏み外した女」として描いたのは、婚外の妊娠と堕胎である。そこにあるのは自らの愚かさへのやり切れなさと、現実に押しつぶされそうな閉塞感である。もう一つ挙げるなら、女であるがゆえに描くことができる女の性の生々しさである。

全部を表示
Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください