広島 復興の戦後史

廃墟からの「声」と都市

西井 麻里奈

2020年4月10日

人文書院

4,950円(税込)

科学・技術

破壊の後を生きる 廃墟からの「復興」が唱えられるとき、聞こえなくなる声がある。生き残った人々は、自らの暮らしを取り戻すため、立退きをともなう都市計画に抗い、行政に対し多数の陳情書をしたため、声をあげようとした。本書はこの陳情書に初めて光を当てた画期的研究である。戦後広島を、無数の声とさまざまな力線が交差する空間として描き出す渾身作。 「廃墟をどうにか手なづけようとする無数の試みが交錯し、ぶつかり合う場所に、歴史、社会、都市、そしてそこに生きる人びとの姿が立ち現れる。この街で、人びとが生きて住むために、苦難を訴え、ときにより良く暮らすための狡知を含みながら語った言葉が、今や失われた街や、戦後日本社会の路地裏へと、私たちを誘う。そして破壊されたこの街は、複数の声がぶつかり合うなかで、もう一度「広島」になり、今に至る。ならば、広島はいかに復興してきたのか。」(本書より) 序章  1 先行研究と本書の位置づけ  2 本書の対象と方法  3 本書の構成 第1章 廃墟と描線ーー都市復興のなかの境界画定  1 戦災復興土地区画整理事業の開始  2 異議申立の声ーー陳情書の考察・七つの視点から  3 廃墟と描線 第2章 死者の都市ーー移動する墓碑の軌跡  1 死者と都市  2 復興事業と墓碑移転ーー誓願寺と川内村義勇隊  3 適正化される空間ーー都市の復興と死者 コラム1 働いた者の手ーー空間経験としての復興 第3章 顕在化する復興の境界線  1 一九五〇年代、都市の住宅復興  2 分岐する住まいーー引き続く戦災の影響  3 立退きの延期を求める声  4 陳情書と都市ーー境界侵犯/画定の発話行為 第4章 禁じられた復興を生きるーー広島平和記念公園  1 公園に住む人びと  2 記念空間の形成と立退き  3 原爆ドームを見上げる街 第5章 「不法占拠」という復興経験ーー一九七〇年・相生通り調査から  1 「相生通り」調査の同時代  2 個人史のなかの調査経験  3 「いえ」がつくる「まち」  4 「基町のおと」の言葉のゆくえ  5 調査から記録へーー調査経験の再定位 コラム2 波紋を呼び寄せるーー「相生」から広島市現代美術館へ 終章 廃墟のなかの「声」を読みとく あとがき 参考文献 初出一覧 図版資料の出典および提供者

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