「中国問題」の内幕

ちくま新書

清水美和

2008年2月29日

筑摩書房

814円(税込)

人文・思想・社会 / 新書

日中貿易はすでに日米貿易の規模を超えた。その一方で、中国の国防予算は毎年二ケタの上昇を続け、しばしば「反日」騒動が起きるなど、「政冷経熱」の日中関係は依然として予断を許さない微妙な段階にある。さらに近年の資料争奪戦や激しい環境破壊、台湾との高まる緊張関係は、世界秩序に大きな影響を及ぼしている。しかも、国内の格差の拡大は中国社会を極めて不安定なものにしている。「台湾問題」「共青団と上海閥」「人民解放軍」「格差問題」「中央宣伝部とメディア」「一党独裁下の資本主義」などのテーマを通じ、矛盾を抱えながら膨脹する巨大国家の行方を解剖する。

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Readeeユーザー

(無題)

-- 2019年01月28日

清水美和「「中国問題」の内幕」読了。 胡錦濤国家主席の来日前に、何か良い本があれば読んでおきたいと見つけたのが、08年2月発行の本書だった。 胡錦濤政権発足以来、特に2006年以降に中国で起こった主な事件、中国共産党内での人事、事件を丁寧に拾い上げて、その内幕に迫っている。 1冊の本だけで判断をしてしまうことは危険だと思うが、それにしても中国と中国共産党の持つ矛盾の大きさには、中国の順調な発展に疑問を感じてしまう。 中国では、都市部と農村部での格差が大きな問題になっているが、格差以前に戸籍からして差別があることは知らなかった。中国には農村戸籍と都市戸籍の二つがあり、都市戸籍に属する人には社会保障があるものの、農村戸籍には一切の社会保障がないという。これは、年金だけでなく、農村戸籍を持つものが都市の向上などで働く場合の保険や労災もないらしい。都市部に不動産を持つこともできないため、都市に流入した人たちはスラムを形成しているという。 そんな農村戸籍を持つ人たちが、何千万(公称で4000万人、6000万人という説もあるらしい)も土地を追われて、都市に流入し、保険も何もないまま働かざるを得ない状況になっている。 本書では、「中国の発展は国内に「植民地」を持っているからだ」という表現している。 また、胡錦濤国家主席は格差の解消を目指しているが、その格差の富の側の頂点にいるのが、中国共産党という特権階級という矛盾も格差の解消をむずかしくしているという。 今回の訪日について、胡錦濤国家主席は「戦略的互恵関係」の構築を目的にしているが、その中の最重要問題は「台湾問題」であり、日本に対して台湾問題での譲歩、特に「台湾の独立は認めない」という言質を取りに来るのではないかと予測しているがどうなるか。 本書では、中国にとって外交上の最重要問題は「台湾問題」であり、胡錦濤主席は、国際調和を念頭に台湾との和解を目指しているが、国内の党内の反対勢力、「一つの中国」にこだわる勢力や世論の前に対応を苦慮しているという。 その他、軍事問題、後継者問題など、あまりお目にかからない内容がかかれていて面白かった。

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