これから世界はどうなるか
米国衰退と日本
ちくま新書
孫崎享
2013年2月28日
筑摩書房
880円(税込)
人文・思想・社会 / 新書
戦後の世界には、常に米国が最強という「柱」があった。軍事的に経済的に、文化的にも他国を圧倒した米国が戦後世界を取り仕切った。旧ソ連との冷戦に勝利し、日本の経済的挑戦をも退けたことで、盤石と思われたその地位が、しかし今、揺らいでいる。米国の影響力が減退する中、世界は新たな秩序を模索し始めた。いっぽう日本は、ますます米国依存を深めているようにも見える…。外交と国防の大家が激動の国際政治をリアルな目で俯瞰。新時代の針路を読み解く。
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(無題)
著者は国際関係論から世界は今、歴史的な変動期にある、と結論づけています。本書は「米国の世界支配が終わるのか否か、終わるとすると、世界秩序はどうなるか」を論じています。私も現在が変革期にあるのは全く同感ですが、私の場合は金融資本主義の行き詰まりによって、新たな資本主義が模索されるという意味あいでの変革期と位置付けています。その意味では、著者が米国の将来を論じるのは、私にとっても非常に意味がある事となります。ここでは、しばらく著者の論を紹介する事にしましょう。 第二次世界大戦から今日まで、常に米国が世界最強で、世界を取り仕切ってきました。フランシス・フクヤマという米国の著名な歴史学者は『歴史の終わり』を書き、米国体制の完成でもって歴史は終わったとしました。日本でも、米国追随が国益に合致するとの認識は多くの識者に共通のものでした。 ところが、この米国支配が揺らいでいます。私達日本人は「米国が世界に君臨することは永遠に続く」とすら思っていますが、経済では、確実に米国が世界一の座から降りつつあるのです。2010年、中国は工業生産で米国を抜きました。1913年以降、約100年米国は工業生産で世界NO1の地位にありました。国民総生産(GDP)でも、中国は米国を抜き去るのは確実です。 もし、日本人の大多数が「中国は超大国として米国を抜く」ということを事実として受け入れるとすると、どうなるでしょうか。「米国に依存すれば安全保障は保たれる」「米国経済との一体化で日本経済の繁栄がある」という政策の是非が問われます。統計数字から明らかであるにもかかわらず、日本国民が「中国は超大国として米国を追い抜く」という状況を充分知らないのは、何か恣意的な力が働いているように思えます。先ず、政策がある、この政策に都合の良い情報を流布させる、これが今日の日本社会の姿です。 ところが日本社会では、原発事故以降、大変な変化が起きました。メディア、大学教授、官僚など従来権威とされる人々の発言の信用が一気に消滅したのです。日本社会では、今大変な情報革命が起きています。従来正しいと思ってきたものが実は正しくなかったことが分かってきたのです。そう日本の世論はマスメデイアなどの従来の権威から離れてソーシャルメディアに基づいて判断し始めました。それは、私達が自らが判断する時代に入ったことを意味します。 それにつけても、金融ビッグバンでアメリカにこの国をメチャメチャにされたのに、性懲りも無くまたTTPでこの国を過とうとしています。
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