人間の条件

ちくま学芸文庫

ハンナ・アーレント / 志水速雄

1994年10月6日

筑摩書房

1,650円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

条件づけられた人間が環境に働きかける内発的な能力、すなわち「人間の条件」の最も基本的要素となる活動力は、《労働》《仕事》《活動》の三側面から考察することができよう。ところが《労働》の優位のもと、《仕事》《活動》が人間的意味を失った近代以降、現代世界の危機が用意されることになったのである。こうした「人間の条件」の変貌は、遠くギリシアのポリスに源を発する「公的領域」の喪失と、国民国家の規模にまで肥大化した「私的領域」の支配をもたらすだろう。本書は、全体主義の現実的基盤となった大衆社会の思想的系譜を明らかにしようした、アレントの主著のひとつである。

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(1

starstarstarstar
star
4.5

読みたい

45

未読

32

読書中

13

既読

23

未指定

120

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

人間としての「活動」

-- 2021年09月28日

ギリシャのテクストの読み直しつつ現象学的アプローチによって、人間の活動力には肉体的な必要に迫られて行う「労働」、世界の「人間の工作物」全体を保つための「仕事」、その世界を超え出でて、人間世界において人と人の対話が行われる「活動」に分かれるとする。人間の意識はその初めから、存在論的に異なる世界で、異なる活動力を持つように規定されているのである。ただし、これはあくまで現象学的記述であって、価値的なヒエラルキーがこれらにあらかじめ埋め込まれていることはないし、また存在論的な先後関係もない。よってこの三者のヒエラルキーは人間の意識のなかで変わりうるのであり、アーレントは現代の「労働」優先に危機感を抱く。

全部を表示
Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください