大衆の反逆
ちくま学芸文庫
ホセ・オルテガ・イ・ガセト / 神吉敬三
1995年6月7日
筑摩書房
968円(税込)
人文・思想・社会 / 文庫
1930年刊行の大衆社会論の嚆矢。20世紀は、「何世紀にもわたる不断の発展の末に現われたものでありながら、一つの出発点、一つの夜明け、一つの発端、一つの揺籃期であるかのように見える時代」、過去の模範や規範から断絶した時代。こうして、「生の増大」と「時代の高さ」のなかから『大衆』が誕生する。諸権利を主張するばかりで、自らにたのむところ少なく、しかも凡庸たることの権利までも要求する大衆。オルテガはこの『大衆』に『真の貴族』を対置する。「生・理性」の哲学によってみちびかれた、予言と警世の書。
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「お坊ちゃん」な大衆への警告
オルテガは英雄崇拝的に、これまではごく一部の人間が自らと自らの帰属する集団の運命を引き受け、これに毅然と立ち向かって創造的な生を歩み、他の多くの人々は服従する形だったが、現代になり、そのような生を歩む力のない大衆に政治的な力が与えられてしまったこと、彼らは作り出された環境が今後も変わらず続くと信じる「慢心しきったお坊ちゃん」であると警告する。創造性なき大衆は高貴さと野蛮さの区別もつかず、ファシズムやマルキシズムに巻き込まれるのである。ヨーロッパに対しては、国民国家のこの避けがたい危険に対応するため、超国民国家を作り、ヨーロッパにおける生の本来的な創造性を回復させていくべきだとする。まさに現代のEUを予告する書となっている。
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