君は永遠にそいつらより若い

ちくま文庫

津村 記久子

2009年5月13日

筑摩書房

638円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・実写映画化決定! !◎津村記久子作品初の映画化◎主人公・堀貝佐世(ホリガイ サヨ)役は佐久間由衣さん痛ましい過去を持つ猪乃木楠子(イノギ クスコ)役は奈緒さん監督・脚本:吉野竜平さん2021年全国順次公開予定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だるい日常その裏に潜む悪意ーー大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。解説:松浦理英子

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Readeeユーザー

(無題)

starstarstar 3.0 2021年08月14日

大学4年生、公務員試験に合格し就職が決まっていて、卒業までの暇を持て余している女・ホリガイが主人公。工場でのバイトをたらたらこなしつつ、飲み会で時間をつぶす、という感じの過ごし方をしている。彼女は友達がいないわけではないし(男友達も女友達もいていいなーと思う)人付き合いもふつうにこなせるけれど、処女なのが悩み。愛されなくても別にの宮田ちゃんみたいに過去のトラウマから誰も愛せないとかではなく、普通になぜか彼氏ができない、という設定で俄然読みたくなって読んだ(設定はポッドキャストで知った) 結論、とても良かったけど、最終的にイノギさんっていう女の子とホリガイは寝てしまうわけで、しかも一夜の遊びとかでもなく、いや最初は一夜の遊びのつもりだったんだけどたぶん結局惚れてて、遠くのイノギさんに会いにいくところで話が終わる。いや女が女を好きになっても別にいいんだけど、でもそれやられるとますます私自身が不良品っていわれてる気になるからもっと普通の話が読みたいんだが……とちょっと思ってしまった。 八木くんのこといいなーと思ってたしバイセクシュアル?ってことなんだろうか。それともイノギさんだけ特別枠という感じか。 イノギさんが中学生のときに男に暴行を受けてるのも、ホミネくんが自殺したのも、河北が彼女のアスミちゃんの手首を切って流血沙汰になってるのも、若干のやりすぎ感を感じなくもない。でも共感を呼ぶ目的で書いてる小説ではないんだろうなというのをところどころ感じるし、この謎のもりもり設定が純文学っぽさである気もする。難しい。 p17  とても哀しかったのだった。また変わった女の子だと思われてしまった、とつらくなった。そんなふうには思われたくないのだった。個性には執着しないのだ。執着しないどころか、積極的になくしてしまいたいと思っている。けれどやっぱりわたしは、変なふうに思われてしまうようなことを言ってしまう。いつもそうだった。女としてどうしようもないのなら、せめてそちらの側に立って話ができますよ、といらぬ売込みのようなことをして、変わった子だ、という印象だけを植え付けてそれで終わり。 ↑あーーわかる。自分が傷つかないように論点をずらしたくなるんだよな……自分の容姿が醜いから勉強を頑張る、とか、笑いをとれるようになる、とか、その努力自体は悪いことではないけど、結局なんの解決にもなっていないなと思う。 p69 河北もアスミちゃんも一様に、両親の愛情を疑っていたと言っていた。それが問題の一端なのだろうか。わたしの実家は祖母と母親とわたしの三人家族で、いくつかの役回りの人員を欠きながらも、愛されていないと感じたことはなかった。なぜこんなことを考えたのかわからないけれど、河北は、言葉をたがえながらも、わたしの飢えのなさを責めているのだろうと感じた。 「問題がないのは悪いことじゃないけど、寂しいことなのかもしれない。わたしにはそれが普通だけど。このまま問題を抱え込んでも、わたしを助けてくれる人はいないと思う」わたしは、顔や首を拭きながら、ゆっくりと言葉を選んで言った。「あんたらは、どんな形だろうと助け合って生きてて、それでいいじゃないか。なんでギャラリーがいる?」  一緒に寝てくれる男がいたためしのないわたしに、なんの承認を求める、そう心の中で付け加えた。 p124  努力はそれなりにしたにも拘わらず、じっさいに運だけで受かったような気もするし、うまくいきすぎて、自分でも自分の進路について現実感がなかったから、そう言われるとそうなのかな、とまで思ってしまっていた。  そんなふうであったので、面談を受けるために就職課に集まった、なにか選ばれたのであろう人々の中にあってわたしは、おどおどこそしてはいなかったものの、場違いな、自信なさげな空気を醸し出していたに違いない。 p138  ほらみろ、あの子よりわたしのほうがましとか考えてるうちに、ほらみろ、下品な夢想ばかりしているうちに、まったく。  自己嫌悪の沼に肩まで沈み込み、頭がくらくらして、自分が自分なのか自分じゃないのかよくわからなくなっていくのに、泣きはしなかった。ただしみじみと、わたしは八木君のことをよく思っていたんだなあと感じた。 ↑誰かと比べて、私はまだ大丈夫、とか思って、そんな自分がいやになって、、っていうループ、どうやったら抜け出せるのかわからないよね。 p199 「他人が要ることは難しい。これから一ヶ月以内にポチョムキンでなくなるのと百メートルを九秒台で走れるようになるのと、どっちが達成できるかっていうと後者のような気がする。陸上やってる人にものすごく失礼なのはわかってるんだけどさ」 (※ポチョムキン=処女のこと。主人公ホリガイの造語)←これ好き笑

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