
テキヤと社会主義
1920年代の寅さんたち
単行本
猪野 健治
2015年2月25日
筑摩書房
2,200円(税込)
人文・思想・社会
縁日や祭りを追って、旅から旅へ。行く先々で反軍・反戦を訴え、娼妓の解放を唱えたテキヤたち。厳しい弾圧にさらされながらも、ときに特高警察を煙に巻き、また遊郭の用心棒と激しく衝突し、血みどろの活動を繰り広げた。何が彼らを駆り立てたのか?底辺に生きた者たちの生々しい戦いの軌跡を探り出す。1920年代の無名の寅さんたちの義理と人情と相互扶助のこころが、格差と貧困が進行する現在を逆照射する!
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(無題)
この本の題名を見て食指を動かす人々が一定数存在すると思いますね。何を隠そう僕もその内の一人ですので、よくわかります。彼らは多分全共闘運動の経験者だったり、自由を何よりも重要な価値と考える人だったり、民俗学に興味を覚える人達でしょうね。 読み始めての第一印象は「よくもまあこんなレンジ狭い内容を本のテーマとしたものだ」でした。1920年代に社会主義者のテキヤが存在した事すら驚きの事実ですが、その数が5300人にも達したといいます。香具師の世界は親分・子分の疑似血縁関係で閉鎖的で内向きの特殊社会ですので、情報が外部に漏れにくい体質を持っています。著者の取材能力と調査努力には並々ならぬものが伺えます。 テキヤと社会主義という意外な組み合わせに興味を抱く人も多いと思います。関東大震災前後にテキヤが社会主義運動に関わり、廃娼運動や反戦反軍のチラシを配布したんですね。知られざる現代史です。 香具師とは簡単にいえば露天商の事で、暴力団とは一線を画す組織です。出自を問わない特殊な職業集団ですから、社会の最下層で育った人間が圧倒的に多く、社会的弱者の権利をうたう社会主義には共感しやすかったのでしょうね。ですから似た境遇の娼妓の解放運動にも熱心だったのです。 このように運動に身を投じた香具師の大部分は、思想とは無関係でした。ところがバリバリのアナーキストが本書で紹介されています。昭和61年に91歳でなくなった高嶋三治です。関東大震災のさなかに軍部によって虐殺された大杉栄夫婦と橘宗一少年、高嶋はこの事実に激昴しました。その復讐戦にたち上がったのでした。そんな最中、高嶋は全くのでっちあげ事件で逮捕されました。一審は無罪。検察控訴がなされ、高裁の審理が始まる前、突然、三宅正太郎・裁判官が高嶋の独房にやってきたところから彼の人生は大きな変貌を遂げます。 今やテキヤは世の中から消えようとしています。どうしてなのか、次のような著者の指摘は印象的です。『終戦直後の窮民革命の力をはらんでいた闇市時代は、アウトロー化した在日朝鮮人、旧台湾省民とテキヤ、博徒勢力を対立、抗争させて、その双方を押さえ込むとともに、連帯の目を摘み取り、弱体化した警察力をカバーした。それが落ち着くと今度は締め上げにかかる。その過程で左翼勢力が肥大化すると、手綱を緩めてこれに立ち向かわせる。高度経済成長の波に乗って、ヤクザの経済界への進出が本格化すると組織暴力を口実に大弾圧を開始する。最終的には、ヤクザの築いてきた伝統的な資金源をことごとくつぶすことによって、彼らを非公然化=マフィア化に追い込むことこそがその隠れた狙いと言うことだろう。やくざをマフィアに変質させてしまえばまさにタイム・シンジケートとなり、任侠の思想は自然に崩壊してしまう仕掛けである』。
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