パーフェクト・ブルー【新装版】
創元推理文庫
宮部 みゆき
2019年11月11日
東京創元社
814円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
元警察犬のマサは、蓮見家の一員となり、長女で探偵事務所調査員・加代ちゃんのお供役の用心犬を務めている。ある晩、高校野球界のスーパースター・諸岡克彦が殺害された。その遺体を発見した加代ちゃん、克彦の弟である進也、そしてマサは事件の真相を追い始めるが…。幅広いジャンルで活躍し、わが国の文壇を代表する作家の一人である宮部みゆきの記念すべき長編デビュー作。
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キレイな青
【パーフェクト・ブルー】 それはほんとうに美しい青色をしていたんだ。 この世のものでないかのような、とてもとても美しい青だった。 パーフェクトなブルー。 それが彼らにもたらしたのは幸せではなく、悲劇だった。 悲劇はとりわけ強い酒なんだよ。 割っても割っても薄くならず、命取りになるような辛い良いばかりを残す、暗い色をした酒。 何度も見たことのある、予期せぬ事件の中に放り込まれた人たち特有の、酔ったような表情。 あまりにも若すぎた。 あまりにも早い、理不尽な死だった。 その運命の残酷さ、不公平さ。 参列者たちは一様に、悲しむのと同様に怒っていた。 「どうしておまえが死ななかったのよ!」 爆弾の投下から爆発まで、一瞬の静寂が訪れるかのように。 ・・・・あたりから音が消えた。 「どうしておまえじゃなかったのよ!」 振り上げたその手は、行く場を失い、 そう言った実の母親は、涙を流し倒れた。 ・・・・少年は背を向けたままだった。 どうして兄でなく自分でなかったのか。 一番、そう思っていたのは少年だった。 出来のいい兄。出来の悪い弟。 よくある話で、当然いつも比べられてた。 片や野球界のスター、片や家にあまり寄り付かない不良少年。 けど、仲が悪かったわけじゃないんだ。 俺たちは、親がいない所でだけ、安心して兄弟でいられた。 俺たちは二人で、たくさん喋ったしたくさん一緒に笑った。 本当に信頼できたのは兄さんだけだった。 それは兄さんも同じだっただろうと思う。 俺たちは二人で支えあって生きてきたんだ。 ・・・・いつだって。・・・・あのときだって。なのに。。 兄を殺したのは誰なのか。 どうして兄は殺されなくちゃいけなかったのか。 転がり込んだ先の探偵事務所で、新米女探偵と喧嘩しつつも、真相を暴くために前進していきます。元警察犬のマサの視点で描かれる、あらゆるジャンルを描き続ける宮部みゆきさんの、記念すべき長編ミステリです。
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