プリズム

創元推理文庫

貫井徳郎

2003年1月31日

東京創元社

770円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

小学校の女性教師が自宅で死体となって発見された。傍らには彼女の命を奪ったアンティーク時計が。事故の線も考えられたが、状況は殺人を物語っていた。ガラス切りを使って外された窓の鍵、睡眠薬が混入された箱詰めのチョコレート。彼女の同僚が容疑者として浮かび上がり、事件は容易に解決を迎えるかと思われたが…『慟哭』の作者が本格ミステリの極限に挑んだ衝撃の問題作。

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Readeeユーザー

(無題)

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2.1 2018年02月11日

結婚を機に退職し専業主婦となった聡子は、自身の不妊治療がなかなか進まないストレスからまた外に出たいと思い始め。家庭教師派遣会社に登録した。そこで初めて紹介されたのが岩本家だ。 岩本家は、世田谷にある古い洋館に住んでいて、聡子は自分とは交わることのない上流階級の生活に圧倒される。息子の修一はなかなか教えやすい子供で、算数の成績もぐんぐん伸びていった。岩本家には立派な庭があり、その庭が気に入った聡子は家人に断って時折その庭で佇んでいた。 ある時そこで、見知らぬ男性と遭遇する。屋敷の離れに住んでいるというその男性は、会う度に印象が変わった。紳士的なこともあれば、馴れ馴れしいこともある。頻繁に会うわけではない相手だったが、初めは翻弄され、どうしていいかわからなかった聡子も、次第に彼の存在に興味を惹かれるようになっていった。岩本家の人に彼の話を切り出しても、どうもはぐらかされてしまう。彼の存在はある意味で、岩本家のタブーであるようだった。 やがて聡子は彼から、衝撃的な事実を知らされることになる。それは彼が解離性障害であるということだ。 「解離」には誰にでもある正常な範囲から、治療が必要な障害とみなされる段階までがある。例えば 不幸に見舞われた人が気を失ったりするが、これは正常な範囲での「解離」である。 更に限界を超える苦痛や感情を体外離脱体験とか記憶喪失という形で切り離し、自分の心を守ろうとするが、それも人間の防衛本能である。だから「解離」ではなく「乖離」がただしいと思うのだが、解離である。 さらに状況が恒常化し、何かのきっかけでバーストしてコントロールを失い、別の形の苦痛を生じたり、社会生活上の支障まできたす。これが解離性障害である。 解離性障害を発症する人のほとんどが幼児期から児童期に強い精神的ストレスを受けているとされる。 そのストレス要因として一般にいわれるのは、学校や兄弟間のいじめなど、親などが精神的に子供を支配していて自由な自己表現が出来ないなどの人間関係のストレス、ネグレクト、家族や周囲からの情緒的、身体的虐待、性的虐待、殺傷事件や交通事故などを間近に見たショックや家族の死などである。 さて、本書であるが、主人公の聡子は恋をした。相手は生身の身体を持つ人格ではなく、解離によって作られた人格。紳士的で知的で男らしい、完璧な男性だ。12の人格に分割していた人格が、聡子の登場で徐々に統合されされてゆく。つまり治癒に向かって行くのだが、それは聡子にとっては・・・。肉体を持たない人格との恋愛は成立するかどうか、百田の実験は成功している。

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