ガーデン

創元推理文庫

近藤史恵

2002年12月31日

東京創元社

1,100円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

小函を抱えて今泉探偵事務所を訪れた奥田真波は「火夜が帰ってこないんです」と訴える。燃える火に夜、人を魅惑せずにはいない謎めいた娘だ。函の中身を見て只事ではないと諒解した今泉は、助手山本公彦と共に火夜の行方を追う。やがて探偵は、死を招き寄せるあやかしの庭へ…。周到な伏線と丹念に組み立てられた物語世界、目の離せない場面展開がこたえられない傑作ミステリ。

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長江貴士

書店員

近藤史恵「ガーデン」

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0
2019年12月15日

みんなのレビュー (1)

Readeeユーザー

(無題)

starstarstarstar 4.0 2018年02月09日

耽美的で少女趣味的テイストのミステリー、との表現が本書の内容を正確に言い表していると思う。ミステリーである以上は、事件が起こるのはお約束。その事件たるや連続射殺とくれば、ハードボイルドタッチの匂いが漂ってきても不思議はないが、本作はあくまでミステリー。そうであれば探偵が登場して犯人探しが常道である。探偵の名前は今泉、そして助手が山本とくれば、そう、あのシリーズである。ところが、本作には歌舞伎も小菊も登場することはない。今泉が大学の教員を辞めてまで探偵稼業を始めた経緯や、山本くんが助手として甲斐甲斐しく今泉の手助けをすることになる訳が明らかにされている。 少女以上大人の女未満の女性・火夜の身辺に事件が起こる。赤い髪に華奢な身体、大きな眸をした捉えどころのない娘・火夜は、男性関係には奔放である。しかし、どんな男に抱かれても、誰も彼女を汚すことはできない。また、彼女は好きなこと以外に一切興味を示さない血統正きペルシャ猫のようであった。火夜を飼いならすのは、誰にとっても不可能な出来事であった。死ぬことだけを決め、夏の終わりの海を彷徨った真波は火夜に出会った。育ちも性格も全く違う2人が心を通わせ、気がついた時には何の違和感もなく一緒に住むようになっていた。その火夜が不意に姿を消してしまう。そして二週間、真波の許へ火夜と同じエナメルを塗った小指が納められた小包が届く。動顚した真波は同じマンション内の今泉文吾探偵事務所を訪ね、火夜を捜してほしいと依頼する。 好きな人がいる。だから殺さなくてはならない、火夜はそう言い残し、拳銃を持って姿を消したのだった。探偵の今泉は、助手の山本と共に彼女の残した痕跡を追う。かつて死ぬことしか考えていなかった真波、火夜を姦計を持って我がものとしようとした横田、ヤクの売人諏訪、さらには山本と火夜、登場人物が次々と拳銃の餌食となっていく。犯人は誰か、またなぜ狙われなければならなかったのか、謎の闇はドンドン深まるなか、事件は進展を遂げる。 事件が起こるのは、シャリマーを思わせる退職医師・藤枝邸の庭である。シャリマーとは、サンスクリット語で「愛の殿堂」の意味である。インドの大帝シャー・ジャハーンと愛妃ムムターズ・マハルの400年前の愛の物語が秘められたガーデンである。美しい妻が亡くなった後、彼が22年の歳月をかけて築いた霊廟こそが、世界遺産として有名なタージ・マハルである。本作はミステリーの体裁をとるが、実は火夜の純愛物語であった。

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