動物園の鳥
創元推理文庫
坂木司
2006年10月31日
東京創元社
660円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
春の近づくある日、僕・坂木司と鳥井真一のもとを二人の老人が訪ねてきた。僕らの年上の友人でもある木村栄三郎さんと、その幼馴染みの高田安次朗さんだ。高田さんがボランティアとして働く動物園で、野良猫の虐待事件が頻発しているという。動物園で鳥井が掴んだ真実は、自身がひきこもりとなった出来事とどうつながるのかーー。はたして鳥井は外の世界に飛び立てるのか、感動のシリーズ完結編。鳥井家を彩る数々の家庭料理をご自宅で作れる、簡単レシピ集「鳥井家の食卓」など、文庫版おまけ付き。著者あとがき=坂木司 解説=畠中恵
本棚に登録&レビュー
みんなの評価(19)
starstarstarstar
読みたい
15
未読
15
読書中
2
既読
248
未指定
213
書店員レビュー(1)書店員レビュー一覧
みんなのレビュー (3)
参考になった順
新しい順
登録しました。
close
ログイン
Readeeのメインアカウントで
ログインしてください
Readeeへの新規登録は
アプリからお願いします
- Webからの新規登録はできません。
- Facebook、Twitterでのログイ
ンは準備中で、現在ご利用できませ
ん。
シェア
X
LINE
リンク
楽天ブックスサイト
楽天ブックスアプリ
© Rakuten Group, Inc.
キーワードは1文字以上で検索してください
Readeeユーザー
甲斐性のある引きこもり
【大人の視点と子供の純粋さ】 外資系の保険会社に勤める僕・坂木司には、一風変わった親友がいる。 自称ひきこもりの鳥井真一。引きこもりと言っても、自宅でコンピュータプログラマーの仕事をしていて、甲斐性がないわけではない。外に出ない代わりに、趣味は全国各地の銘菓を通販で取り寄せること。そしてかなりの料理好きである(腕前も上々)。 ただ、複雑な生い立ちである鳥井は、外部との接触を極力避け、僕を通じて世界を見ている。 そんな鳥井の関心を外の世界に向けようと、鳥井の家にいき、鳥井の作るご飯を食べながら、身の回りに起こったちょっと不思議なこと、を喋ることを日課にしていた。 鳥井は、頭の回転が速く、わずかな情報から物事を推理することが出来る。だが、外に出て実際現場を見なければわからないこともでてくる。嫌がる鳥井を外に出す口実として、なぞ解きを用意するのが僕の使命だ。 外に連れ出し、外の世界に彼を触れさせるのは心地よかった。 世界は広いんだよと、僕が教えてあげたかった。 ああ、僕がいてあげないと、と思ってた。 けれども不安がいつもついて回っていた。。。 いつか、僕を頼ってくれることがなくなってしまうのではないか。 いつか、僕のもとから飛び立ってしまうのではないか。 いつか、僕ひとりだけのものではなくなってしまうのではないか。 いつか、外の世界に羽ばたいていなくなってしまうのではないか。 外に出る機会が多くなるにつれ、鳥井のもともとある魅力を知った人たちが、自然と鳥井の周りに集まってくるようになってきた。僕としか約束のなかった彼が、ほかのだれかと約束をしたりしだした。 いつもいた僕の場所に、違う人間がいる。 嬉しいけれど、悲しい。 悲しいけれど、喜ばなければならない。 僕たちは少しずつ大人になっていく。 いつまでも子供のままではいられない。 大人になる。 それは苦しくて哀しくて。 いつまでも子供の時のように一緒にいられない。 いつまでも子供の時のように二人だけではいられない。 大人になる。 それはいつか訪れる別れのための成長だ。 それなら大人になんてなりたくない。 泣きながら、そう答えたのは、僕がどうしても手放したくなかった親友だった。 でもいつかは大人になる日がくるのだ。 その時に僕がそばにいられたらいいけれど、いられなくなったときのために、僕はキミを大人にさせる。 僕がいなくても大丈夫なように。
全部を表示いいね0件