人間はこんなものを食べてきた

小泉武夫の食文化ワンダーランド

日経ビジネス人文庫

小泉武夫

2004年2月29日

日経BPM(日本経済新聞出版本部)

628円(税込)

人文・思想・社会 / 文庫

原始時代から現代まで、人間は何を食べてきたのか?火や道具による調理法の発達、微生物の利用に見る食の知恵、民族ごとの食文化の違いなどなど、ハッと驚く話が満載。小泉先生とたどるおもしろ食文化史。

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3.8 2018年01月28日

神出鬼没の「味覚人飛行物体」をもって任ずる小泉先生が語る食文化史、いや文明史と言って良い内容である。氏は自他共に認める「食べることが大好き」で珍しい食べ物があれば、どこにでも出かけて行ってしまうな農学博士でもあります。「衣食住」のなかでも命を長らえるいちばん大切な「食」の歴史・文化について、著者は、軽快に、時にユーモアを交えて語りかけます。 まず、食のルーツは当然の事として原始時代に求められます。最初は人間も動物と同じように食べられるものをそのまま食べていましたが、やがて道具を使って食材を採ったり、火を使って加熱することを覚えます。人類は火を使うことによって脳の容積が大きくなり、さらに知恵が発達し、サルや類人猿とは違うヒトになっていったのです。そして次には食料を保存することを考えました。その方法は乾燥による脱水、竹や笹による防腐、塩(塩蔵)や煙(燻製)、灰も防腐剤になるといいます。そして最も食の歴史を変える原因となったのは発酵です。チーズ、ヨーグルト、納豆、醤油、お酒。私たちの食生活に発酵食品は欠かせません。特に雨量の多い日本には、カビを使った代表的な発酵保存食品があります。そうです。鰹節です。鰹節があんなに堅いのは、表面についたカビが内部の水分を吸い上げるからなのだそうです。また、カビは水分を吸い上げるだけでなく、脂肪分を分解する酵素を出し、その結果、うまみのもととなるアミノ酸、イノシン酸ができ、上品な出汁の味を出すのです。発酵は保存だけでなく味、栄養面においても食文化に欠かすことのできない存在なのでした。発酵食品については、先生、面目躍如の感がありまが、少し脱線して臭い食べ物の話。西のチャンピオンがアザラシの漬物、キビャック。ギンナンの強烈な臭気にウンチの臭さを上乗せしたようなにおいらしい。東のチャンピオンが、韓国のホンオ・フェというエイの刺身。目まいがするほどの激しいアンモニア臭だそうだ。ところが、これら以上にすごいのが、スウェーデンでつくられるニシンを原料にした缶詰、シュールストレンミング。くさやと鮒鮨と、古くなった大根の糠漬けが入り交じったなかに、ニンニクとギンナンの腐ったにおいが加味されたような壮絶な臭さ。世界でいちばん危険で臭い「地獄の缶詰」だそうです。 人間は知恵を使って、他の動物には真似のできない食文化を作り上げてきました。私たちが毎日おいしく食事をいただけるのも、人類の食への飽くなき探究心があったからということに他なりません。そこには新たなものを発見する喜びだけでなく、失敗による犠牲や落胆もあったことでしょう。 この本では他にも食の加工、好き嫌い、マナーなどについて、文化的な面や生理学的な面、いろいろな側面からとらえて説明しています。そして最終章「21世紀の食をめぐる諸問題」で著者は日本の食文化の危機を訴えています。農業軽視の政策、日本人の食生活への関心の薄れを危惧し「恵まれた気候風土の日本で培われた伝統の食文化をこのまま終わらせることだけは絶対にあってはならない」という文章で最後を締めくくっています。人類が長い年月をかけて築いてきた食文化、それは、それぞれの土地や気候の特徴を生かした独自のもので、また生きていく上での栄養面についてもよく考えられている奥深いものでもあり、これらを決して無駄にしてはならないのだという著者の思いが強く感じられます。

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