花と火の帝(下)

日経文芸文庫

隆慶一郎

2013年10月25日

日経BPM(日本経済新聞出版本部)

693円(税込)

小説・エッセイ / 文庫

天皇の隠密の存在を突き止めるため次々に幕府が放つ刺客。「殺してはならない」という後水尾帝の言葉に縛られながら、岩介はその術と知恵で、それらを悉く跳ね返していく。朝廷への圧迫を強める2代将軍・秀忠への対抗策として、帝は、遂に女帝への譲位を決断する…

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(無題)

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3.6 2018年01月27日

鬼の子孫である八瀬童子の一族・岩介は、5歳のとき天狗と称する老人に出会いその技に心酔した。自分もそうなりたいと考え、朝鮮に渡り修行を重ねた。11年たって八瀬に帰ってきた岩介は、疾風のごとく走り、鳥のように飛ぶことさえあった。元々の素質に加えて英才教育とも言うべき過酷な鍛錬で、驚異的な身体能力を身につけていたのだ。しかも、それに加えて、八瀬童子に受け継がれた予知能力や読心術に磨きをかけ、その上に呪術まで行う。もはやスーパーマンである。そんな岩介が若き後水尾天皇と出会い、その人柄に触れて一生を捧げる決意をするのであった。 本作にあって、何よりも胸湧き心躍るのは、岩介の味方に猿飛佐助、雲隠才蔵らが登場することである。猿飛佐助、雲隠才蔵といったら僕が小学生であった頃のスーパーヒーローだ。昭和の頃、路地裏で印を結んでは変身していた己の姿を思い出すと、それだけでワクワクしてしまう。では、本書では忍術が主役かといえば、猿飛や霧隠のスーパー忍者が脇役となってしまうのである。それほどに岩介の呪禁の術が図抜けているし、何より驚きなのは本書では天皇を我が国呪禁の総元締めと位置づけているところだ。幕府の策略や刺客と死闘を繰り広げる彼らに感情移入して、文句無しの喝采を送りたくなる。 さて、帝である。後水尾天皇にとって最大の悩みは秀忠の息女・和子の入内である。秀忠の狙いは和子が男子を産むことによって外祖父になることが明白であるだけに、「いやだ」と天皇がまず発することのない言葉で、絶対的な拒否を表現した帝であったが、次第に妥協せざるを得ない所に追い込まれて行ったのだった。しかし和子入内は幕府権力機構の朝廷への侵略であった。和子とももに裏柳生100名が朝廷に駐屯したのだった。彼らの役割は、和子以外の女官が帝の子を身籠った時に、その子を抹殺することにあった。それは将軍、秀忠の意思でもあった。

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