文画双絶 畸人水島爾保布の生涯

前田 恭二

2024年2月2日

白水社

15,400円(税込)

ホビー・スポーツ・美術

本書の冒頭は「誰のことだね、という人もあるだろう」という一文で始まる。「名前の読みからして難しい。そこはミズシマ・ニオウと言えば済むにせよ、その先、誰かというのを、さて、どう答えたらよいものか」と謎めいた問いかけで著者は続ける。 明治・大正・昭和にわたり、文学・美術の分野に大きな足跡を残しながら忘却の彼方に消し去られた畸人の魅力を、十年の歳月をかけて調べ上げ、執念と使命感を深くして掘り起こしたのが本書である。 爾保布とは誰かを明かすため、著者は周辺の人物を探っていく。たとえば「日本のビアズリー」と称された爾保布が、谷崎潤一郎『人魚の嘆き・魔術師』の挿絵と装幀を手がけたこと。長谷川如是閑に大阪朝日新聞の記者として迎えられ、画文ともに活躍する場を与えられたこと。また鬼才中の鬼才武林無想庵とは生涯の悪友として付き合ったり、門弟三千人といわれた文壇の大御所佐藤春夫の媒酌人も務めたり、同じ旅好きの岡本一平らと漫文『東海道漫画紀行』を刊行したり等々……。 自ら世間の梯子を降り、四方八方に才知を蕩尽し、諧謔と反骨に生きた姿を、畏敬の念とともに現代に引き戻す。  まえがき 愚かさの方へ 第 一章 根岸、不思議ね 追憶の家郷 第二章 この父の子 父の履歴と幼少時代 第三章 二兎の徒に 美術学校と詩心の目覚め 第四章 鳩よ、見やる闇夜とは 児童文学と従軍 第五章 意地もひもじい 美校卒業と結婚 第六章 黄泉の季節、鬱積の御代 「新文芸」の頃 第七章 暗い快楽 明治の終焉、デカダンの日々 第八章 異端、変態 「モザイク」と行樹社 第九章 長旅、延びたがな 新潟から関西彷徨へ 第十章 居場所なし、よしなよ芝居 美術劇場と「モザイク」の終焉 第十一章 軽やかさ、大阪やろか 大阪朝日新聞へ 第十二章 社が多才さ耕し 大阪朝日での仕事 第十三章 字に黒し、真白く虹 白虹事件と大阪朝日退社 第十四章 醒めとったまま、また勤めさ 東京日日新聞の頃 第十五章 とかくに一言、皮肉かと 「根岸より」 第十六章 如何はせん、現世は瓦解 関東大震災の前後 第十七章 なんか槌音、落ち着かんな 帝都復興と中国趣味 第十八章 どんなもんだ、奇談も何度 児童文学と水島家 第十九章 委細見物、雑文掲載 満韓遊覧と円本ブーム 第二十章 徒食、閑談、書くよしと 漫画家仲間と「食道楽」グループ 第二十一章 ニヒル、淡々、暗澹たる日に 「大日」のコラム 第二十二章 屈む、かじかむ画家 日中開戦の頃 第二十三章 国もヨタ、四方に苦 近衛新体制の時代 第二十四章 遁世、敗戦と 太平洋戦争と新潟疎開 第二十五章 雪に消ゆ 新潟隠棲と晩年  あとがき  参考文献  人名索引

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