J・M・クッツェーと真実

くぼた のぞみ

2021年10月19日

白水社

2,970円(税込)

日本初のクッツェー論 「クッツェーを翻訳することは、彼の視点から世界全体を見直すレッスンだった」 ーーノーベル文学賞作家J・M・クッツェーの翻訳を80年代から手がけてきた著者が、クッツェーの全作品を俯瞰し、作家の実像に迫る待望のクッツェー論。 1940年、南アフリカのケープタウンでオランダ系植民者の末裔として生を受けたクッツェーは、故郷を出て、生まれ育った土地の歴史について外部から批判する視点を養い、自らを徹底検証し、植民地主義を発展させた西欧の近代思想を根底から問い直す試みを、創作を通して行ってきた。著者は、作品を取り巻く社会的・歴史的背景、作家の動機と心情、その変遷に深い針を入れるように調べていく。自伝的三部作を翻訳するためにケープタウンを訪れ、少年時代を過ごした家や風景を見て歩き、フィクションと自伝の境界を無化しようとする作品の、奥深くに埋めこまれた「真実」を解き明かしていく過程はスリリングだ。 作家が来日した時の様子や、アデレード大学で開かれたシンポジウムに招待され、作家の自宅でゲストたちと食事を共にした時のエピソード、言語と出版についての作家のラディカルな活動、翻訳作業の過程のやりとりから伝わってくる作家の素顔も貴重な証言となっている。巻末に詳細な年譜と全作品リストを付す。 プロローグ──ふぞろいの本たち 第1章 南アフリカの作家、J・M・クッツェーと出会う  ショッキングピンクの砂時計   クツィアでもクッツィーでもなく   アパルトヘイトとはなんだったのか──『鉄の時代』  ポケットに南瓜の種子を入れて──『マイケル・K』   トンネルを抜けるとカルーだった  『恥辱』をめぐる二、三の事柄            紙とPDF  第2章 自伝、フィクション、真実   自伝、物語ること──『少年時代』『青年時代』『サマータイム』  ナカグロ詩人  第3章 世界のなかのJ・M・クッツェー                  驚異の自己改造プロジェクト──『ダスクランズ』   発禁をまぬがれた小説──検閲制度と『その国の奥で』      熱波のアデレード   ジョル大佐のサングラス──『蛮族を待ちながら』  文体と文学論──『世界文学論集』                  クッツェー漬け  第4章 北と南のパラダイム  「鯨」がいない──『三つの物語』『遅い男』『厄年日記』   よみがえるエリザベス──カレンとコステロ  『モラルの話』に英語版がないわけ  J・M・クッツェーのレジスタンス  翻訳の置きみやげ  第5章 ジョン・クッツェーとの時間   少年の本棚──詩と写真と哲学と                  ヘンドリック・ヴィットボーイの日記  『子供百科』と「イエスの三部作」   クッツェーと笑い   マカンダで迎える誕生日  エピローグ──なぜJ・M・クッツェーを訳してきたか 参考文献・謝辞   J・M・クッツェー年譜  J・M・クッツェー全作品リスト

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