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(無題)
中国には『金を貸すバカ、返すバカ』という言葉があるそうだ。本書のまえがきで元総理府補佐官の岡本行夫が述べている。日本人がこんな言葉をきくと、中国人との付き合いには、何ともやり場のない絶望感に打ちひしがれてしまう。本文中でも、何度かそういたう場面に遭遇した。できれば、お付き合いはご遠慮申し上げたいところだ。しかし、現実には隣の大国を何処かへ動かすわけにはいかないし、今や日本経済と密接に結びついた世界第二の経済大国なのだから、無視するわけには行かない。従って、わが国の国益を守るために最大限の外交努力が求められる。 まずは、隣人の等身大の姿を知ることから始めなくてはならないだろう。本書は2006年の出版なので、中国の現状は、当時とは変化があるのかもしれないが、中国共産党一党支配の限界を指摘し、中国の将来に起こり得ることをやんわりと示している。尖閣諸島の問題、中国の反日暴動、中国の権力闘争等、当初からの経緯が語られているため、今起きている状況の背景が良く分かる。 また、著者の視点は常に暖かく、弱者に向けられている。本書のまえがきで、館員の自殺について「上司として、館長として、彼を守れなかったことへの無念さはいまも変ることがない」と書きだし、同年11月に末期がんの宣告を受けた後、本書をまとめる動機の一つに自殺事件を挙げている。著者は事件に関してはほぼ沈黙を守ったが、中国の情報機関が卑劣な手段で電信官から暗号情報を取ろうとしたのは、著者の情報収集活動に起因していると考え、責任を感じたのではないか、と見る人もいる。著者の情報の中には軍事情報も含まれていたとされ、中国側はその内容と情報源をつかむため、電信官に接近したのではないかと関係筋は話す。 本著では、中国の問題点として、「環境汚染と公害・水資源の枯渇とその汚染・森林破壊と砂漠化」を取り上げ、今後ODAの打ち切りや削減を言う前に、そうした課題の解決にシフトすることの重要さを強調している。加えて興味を持たされるのは、国交が途絶えているバチカンとの国交回復で、それが実現すれば、普及を通じて辺地の窮状を世界に発信して、この国の実状をただ非難するのではなく、世界の援助と、この国の上層部に明らかにしていくことが効果的だろうとしている。 また、「靖国」について中国の圧力に負けて参拝中止をすれば、国のメンツを持たない国だととられるので、絶対に中止してはならないと説く。ただ同時に根気強、日本の戦後平和に過ごしてきた状況とか、靖国が「日本民俗独特の宗教」であることを明確した上で、他の普遍的な宗教とは全く違う、日本人のみが自動的に氏子になるという「排他的な自然崇拝的な宗教である」ことを、世界のメディアに明らかにしていくことを提案している。 末期癌と診断された後に抗癌剤を打ち、闘病生活をし乍ら、使命感に燃え、命を賭けて渾身の思いで書き上げられたこの本の内容には迫力があり、一読の価値はある。
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