
さらさら流る
柚木麻子
2017年8月19日
双葉社
1,540円(税込)
小説・エッセイ
あの人の内部には、淀んだ流れがあったー。28歳の井出菫は、かつて恋人に撮影を許したヌード写真が、ネットにアップされていることを偶然発見する。その恋人、垂井光成は菫の家族や仲間の前では見せないが、どこか不安定な危うさを秘めており、ついていけなくなった菫から別れを告げた。しかし、なぜ6年も前の写真が出回るのか。苦しみの中、菫は光晴との付き合いを思い起こす。初めて意識したのは、二人して渋谷から暗渠を辿って帰った夜だった…。菫の懊悩と不安をすくいとりながら、逆境に立ち向かうしなやかな姿に眼差しを注ぐ、清々しい余韻の会心作。
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(無題)
うーん、どうなんだろう。一言で言えば、印象に残らない小説だ。別れたパートナーに対する恨みから、彼女の性的写真をネットに公開するリベンジポルノを扱った社会派小説かと思いきや、それは違うようだ。リベンジポルノには、男の側に復讐したいとの悪意が存在するが、これは単に光晴の不注意から流失したもので、全面的に自らの非を認めているからだ。 それでは、本作はどういう小説かと言えば、それは一度題名にまで立ち返ってみると、はっきりしてくる。 春の小川はさらさら流る。 岸のすみれやれんげの花に、 匂いめでたく、色うつくしく 咲けよ咲けよと、ささやく如く。 誰もが知っている唱歌「春の小川」である。だけどチョット待ってよ。「さらさら流る」じゃなくて「さらさら行くよ」じゃなかった?そう、口語体に書き換えられているのだ。いずれにしても、生命力溢れる春の芽吹きと牧歌的な希望に満ちた歌詞である。実は目立たないが、この歌碑が小田急線参宮橋と代々木八幡駅 間の線路沿いにあるのだ。今では面影もないが、当時この一帯は田園地帯で河骨川が田圃を潤していたのだった。この小川を歌ったのがこの唱歌と伝えられている。現在の河骨川は暗渠となっており、小川はおろか水流すらうかがえない。本作は暗渠をメタファーとして人の心の地下水脈を描いたものなのである。
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