空蝉ノ念
居眠り磐音江戸双紙〔45〕
双葉文庫
佐伯泰英
2014年1月4日
双葉社
712円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
隅田川を渡る風が土手道の葉桜を揺らす頃、改築なった小梅村の尚武館坂崎道場に、二十有余年の廻国修行を終えたばかりの老武芸者が現れ、坂崎磐音との真剣勝負を願い出た。その人物はなんと直心影流の同門にして“肱砕き新三”の異名を持つ古強者だったー。
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(無題)
このシリーズも45巻の長きに渡ります。著者が本巻の後書きで50巻で終結を明かしていますので、大団円に向けてスピードアップし始めたようです。前巻では重富利次郎の仕官先に目処がたち、霧子との結婚も秒読み段階に入りました。そして今回は松平辰平におめでたです。博多の大商人箱崎屋次郎平と末娘・お杏が 江戸にやって来ました。辰平とお杏が自然に結ばれるのに1番良い条件、福岡藩黒田家から仕官の口が舞い込みました。かつてのデブ軍鶏と痩せ軍鶏が、今や尚武館の項羽と張飛にまで成長しました。嬉しくなってくるお話の連続で、ワクワクして来ます。 さて、増改築の済んだ小梅村の尚武館道場に、旅塵にまみれた老武芸者が現れ、坂崎磐音との真剣勝負を願い出たのでした。その武芸者は直心影流の同門で「肱砕き新三」の異名持つ古強者でした。辰平との勝負の最中、老武芸者は喀血して試合は中断します。武芸者としての死に場所を求めて磐音と勝負を求める老武芸者・新三郎は、佐々木玲圓の墓前で尋常の勝負の上、望み通り磐音に斃されたのでした。勝負に先立って新三郎が佐々木家の隠れ墓を知っている事に疑問を抱いた磐音は、問いただします。老武芸者の語るところによると、彼の師匠は、流派三代目で、佐々木玲圓の兄弟子でした。道場も尚武館より盛大なものでしたが、密かに玲圓を羨んでいたと言うのです。それは佐々木家が徳川家から密かに課されていた秘命についてでした。それを探るために老武芸者は破門という形で身を隠し、佐々木家の秘密を探っていたのだと言うのです。この佐々木家の密命が物語のクライマックスに大きな意味合いを持つような気がします。
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