20世紀知的急進主義の軌跡

初期フランクフルト学派の社会科学者たち

八木紀一郎

2021年10月20日

みすず書房

4,950円(税込)

人文・思想・社会

1923年1月、「社会研究所」はマルクス主義に立つ学術拠点をめざし、フランクフルト大学に附置されて誕生した。やがて「フランクフルト学派」の母体として20世紀の思想史に大きな役割を果たした。同年5月に開催された「マルクス主義研究週間」には「一人の日本人」も加わっていた。 本書はこの研究所の創設期に集った社会科学者たちの行路を描く。大富豪の子息であり、「複数主義的なマルクス主義」を構想した創設者ワイル。研究所の運営を担い、盟友である第二代所長ホルクハイマーを支えた「国家資本主義」の理論家ポロック。資本蓄積の崩壊の法則を論じ、当時のマルクス経済学のキーパーソンだったグロスマン。中国革命をいちはやく紹介し東洋社会の解明を進めるなかで、ソ連体制の根本的な反対者となったウィットフォーゲル。研究所創設時の助手で、コミンテルンにリクルートされ、中国・日本での諜報活動に身を投じながらも学究としての精神を保ち続けたゾルゲ。 そして「社会研究」ということばを鍵にして、日本と西欧で進んでいた社会科学の同時代性が語られる。 「思想」が現れては消える「モード」のようなものでなく、世界大の政治の渦の中での生き方の選択と結びついていた時代を描く。本書はひとつの世代へのレクイエムとなった。 まえがき 第一章 初期フランクフルト社会研究所のマルクス主義と政治 1 「初期」のフランクフルト社会研究所 2 マルクス主義研究所としての自己規定 3 政治的スペクトルのなかでの社会研究所 第二章 創設者 フェーリクス・ワイル 1 二十世紀思想史の波間のなかで 2 「サロン・ボルシェヴィキ」の誕生 3 社会化論から社会主義経済計算論へ 4 アルゼンチン論 5 後半生 第三章 研究所の執事役 フリートリッヒ・ポロック 1 ホルクハイマーとの共生 2 ポロックの初期著作 3 ソ連の計画経済研究 4 権威主義国家と国家資本主義 5 フランクフルトへの帰還 第四章 異邦人 ヘンリーク・グロスマン 1 ガリチア・ウィーン・ワルシャワ 2 『資本の蓄積並に崩壊の理論』 3 ボルケナウとの論争 4 孤立と離反 第五章 越境者 カール・A・ウィットフォーゲル 1 活発な左翼文化活動 2 フランクフルトでの著作と研究 3 研究の前進と政治的変転 4 「アジア的生産様式」から「アジア的復古」へ 第六章 闇をまとった学究 リヒアルト・ゾルゲ 1 フランクフルトのゾルゲ 2 戦場からドイツ革命へ 3 学位論文はゾルゲの出発点か? 4 ゾルゲの公刊三著 5 モスクワにおけるゾルゲ 6 極東へ 補遺 イソップのことばとしての〈社会研究〉--日本と欧州をつないだマルクス主義 1 フェーリクス・ワイルのフランクフルト大学講演 2 日本での調査 3 ワイルの自伝草稿 4 フランクフルト研究所の創設 5 大原研究所の発展 6 「社会研究」の変貌 参考文献 人名索引

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