相互扶助の経済【新装版】

無尽講・報徳の民衆思想史

テツオ・ナジタ / 五十嵐暁郎 / 福井昌子

2022年6月20日

みすず書房

5,940円(税込)

ビジネス・経済・就職

慢性的な飢饉に苦しんでいた徳川時代の民衆は、緊急時の出費に備え、村内で助け合うために無尽講、頼母子講、もやいなどの「講」を発展させた。当時の民衆の識字率は高く、商いや貯蓄に関して議論し、冊子を作り、倫理は社会的実践に不可欠であるという明確なメッセージも発信したのである。その思想の根底には、伊藤仁斎、安藤昌益、貝原益軒、三浦梅園などの思想を汲む確固たる自然観があった。 徳川末期になると、二宮尊徳のはじめた報徳運動が、村の境界を越えて講を結びつけ、相互扶助的な契約をダイナミックに広げた。その後、講の手法は無尽会社を経て相互銀行に引き継がれていく。 著者は、大阪にあった徳川時代の商人学問所、懐徳堂を調べていたとき、町人知識人の思想が学問所の壁を越えて広がっていることに気づいたという。元来、公的な政治秩序の外側で形成されたこれらの営みは、明治維新後は、国の法体系にどう吸収されていったのだろうか。少なくとも、新しい翻訳語「経済」からは「民を救済する」という意味が脱落するなど、民衆の歴史は劣性遺伝子になっていく。この近代化の社会史が本書では追跡される。 明治初期の混乱や太平洋戦争後の激動を庶民が生きのびたのは、講の精神が脈々と受け継がれたからだった。著者は地方の相互銀行の書庫まで入念に調べ、この歴史がはらむ驚くべき現代性に光を当てる。 卓越した歴史家の観察眼と想像力の結晶であり、日本思想史学の里程標であろう。 日本の読者のみなさまへ まえがき 第一章 徳の諸相 第二章 常識としての知識 第三章 組織原理としての講 第四章 倫理の実践としての労働 第五章 報徳と国家の近代化 第六章 無尽会社 第七章 断片的な言説 解説  五十嵐暁郎 原注 参考文献 索引

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