統合失調症とその周辺

離人症・対人恐怖症の重症例を中心に

高橋俊彦

2011年2月28日

岩崎学術出版社

3,520円(税込)

医学・薬学・看護学・歯科学

●診断のつけ難い統合失調症周辺の症例を検討する ●重症の対人恐怖症、離人症と統合失調症の間には多様な症例があり、診断も難しく医師によって意見が分かれ、様々に論じられてきた領域である。本書ではこうした診断のつけ難い領域にある種々の症例を取り上げ検討する。 ●目次 第 I 部 面接による患者理解 序章 会話による理解とその研究 第一章 精神と身体 第二章 精神医学における精神病理学と生物学的精神医学ー統合失調症を中心として 第 II 部 重症の対人恐怖症および離人症 第三章 視線恐怖と自己視線妄想ー思春期妄想、重症対人恐怖症 第四章 離人症状ーその統合失調症、うつ病および神経症における意味 第五章 重症の離人症ー内因性若年無力性不全症候群例と「自然な自明性の喪失」症候例との比較を通して 第六章 ドゥ・クレランボー症候群 第 III 部 統合失調症 第七章 統合失調症像の時代による変遷 第八章 「自分が異常である」と訴える統合失調症について 第九章 統合失調症と「重症」離人症との連続性についてー離人症状及び思考の聴覚化を手懸かりとして 第十章 思春期妄想症の重症例と統合失調症との関連について あとがき/索引 『解説』 統合失調症は「病識がない」ため、自ら治療を求めることは少ないと言われてきた。離人症、および対人恐怖症と統合失調症との関連を考えさせられる例の中には、自分の状態を何とか改善したいと自ら治療を望む症例もある。そうした例を以前論文に著したことがあり、今回、その一部を集めた。(中略) 現在のわが国における精神医学界には、ICD(国際疾病分類)やDSM(米国精神医学会による診断と統計マニュアル)が普及し、学会とか役所に提出する文書はこうした基準による診断を付さなければならないことが多くなった。たしかに同じ症例をある人はA、ある人はBといったように、診断が分かれることがあるため、あらかじめ項目を決めておいて、この五つのうちの三つ以上の項目にあてはまればA、といったように約束事を作っておけば意見の分かれることは少ない。そうした操作的診断は、生物学的研究とか統計的研究には便利であるし、そうした方法により、たとえば薬物の開発が進むならばそれはそれでよいことである。 一方ではそうした操作的診断法によると、病気の本質とまでは言わないまでも、病気の輪郭がイメージしにくい欠点はある。改訂を重ねれば、そうした欠点も次第に克服されることを期待するのであるが、なかなか期待通りには進まない。そこで精神科の場合多くの臨床医は公式(?)用のICD、あるいはDSMの他に、日常診療では伝統的診断名も使っている。いわば精神科医の二重帳簿、あるいは多重帳簿である。(中略) 重症の対人恐怖症と統合失調症、重症の離人症と統合失調症の間には種々の症例があり、具体的症例では診断一つとっても医師によって意見が分かれ、さまざまに論じられてきた領域である。ICDやDSMに則ればすぐに決着はつくかもしれないが、それだけでは誰も満足しないというような症例が位置する領域である。われわれは日頃、「自分は他人とは違う固有の存在である」と当たり前のように思っている。しかし、その感覚が危うくなることもあるということを、それらの症例は教えてくれるのである。(「序章」より)

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