ロールシャッハ法の最前線

小川 俊樹 / 高瀬 由嗣 / 石橋 正浩 / 齋藤 大輔 / 松本 真理子 / 岩佐 和典

2021年11月2日

岩崎学術出版社

4,950円(税込)

人文・思想・社会 / 医学・薬学・看護学・歯科学

出版がようやく日の目を見ることとなり,ほっとしている。というのも,本書の企画から今日まで諸々の理由でかなりの日数を要したからである。早々に玉稿をいただいた執筆者の方々にはご寛容願いたい。しかしながら反面,ロールシャッハ法誕生100年目という記念の年に出版できたという喜びもある。統計的頑強性やエビデンスをめぐって投影法の危機が叫ばれ,ロールシャッハ法もいずれ姿を消すのではないかといった極論もささやかれている(Schubach, 2015)からである。しかしながら,本書の中でも言及しているように(第6章),統計的頑強性は十分に有しているとの知見も発表されている。しばしば批判の中心となる統計的頑強性だが,個人的にはそもそも投影法に客観検査とよばれる質問紙法と同様の信頼性や妥当性の心理測定法を求めるのが適切なのだろうかという思いがある。ロールシャッハ法には,集団式ロールシャッハ法という形式がある。この形式は,刺激図版としてはヘルマン・ロールシャッハの作成した10枚のカードを用いるが,反応として一定数の反応内容から強制選択してもらうものである。回答を選択肢の中に求めるという点で質問紙法と同じ形式であり,心理測定法による検討が容易となる。この問題は反応数R(第7章)やその制限(第10章)と関連しているが,反応の自由度という投影法の本質とも関係する重要な問題である。反応の自由性をロールシャッハ法の本質と考えるのであれば,質問紙法とは異なった統計的頑強性の指標を追求すべきではなろうか(第5章)。ピオトロフスキー(Piotrowski, C.)は米国における各種心理検査の使用頻度調査を一定の間隔をおいて実施し,定点観測を行っている。彼の調査によれば,投影法は将来使用されなくなるであろうと毎回予測されながら,その後の調査では予測されたような状況には陥っていないことが見出されている。そのため彼は,「このような願い(投影法衰退の予測)と異なり,投影法は消え失せないのであり」,投影法に対する反応は理論的というよりも感情的なものではないかと指摘している(Potrowski,1984; 2015)。このピオトロフスキーの言葉のように,ロールシャッハ法には誤解があるのではないだろうか。本書ではロールシャッハ法の最新の研究成果をまとめ,ロールシャッハ法の現在の姿を見てもらおうと意図した。土居(1979)に「精神療法に進歩はあるか」という所論があるが,ロールシャッハ法が誕生して100年を迎え,「ロールシャッハ法に進歩はあるか」を考えてみた。(「あとがき」より)

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