ラヴィン・ザ・キューブ
森深紅
2009年2月28日
角川春樹事務所
1,540円(税込)
小説・エッセイ
認知症を患った父親の為に、工業デザイナーへの道を断たれた水沢依奈はロボットメーカーに就職し、介護をこなしながら功績をあげていたが、突然の異動で特装機体開発室の秘書を命じられる。人事に不満を持つ依奈を悩ませたのは、室長である佐原シンという分裂病質の悪名高いロボット工学者。アリーという認知行動研究用アンドロイドを秘書として置いている佐原は人間の補佐を拒み依奈を追い出そうとするが、依奈は自分の異動の理由が会社が受注したアンドロイド10体の製造管理だと役員に告げられる。依奈は、納期遵守のエキスパートとして、佐原の作る「ロボット」の秘書となった。実はそれは兵器であったのだ…。だが、佐原だけはルックスのみに不満を募らせていた。生産工学の観点から相容れない要素である造形芸術(アート)と理論の追求(エンジニアリング)。理論の追求よりも造形を優先する佐原は、結果的に機械の物理的な限界まで技術と才能で飛び越えてしまう。それこそが佐原が天才と呼ばれる所似だった。製品の引き渡しの際、機体の起動をする権限者に佐原は依奈を選び、その解除コードを与える。解除コードは不思議な3つの記号『$◇a(エスバレー・ポワンソン・プティタ)』で構成されていた。佐原がコードに込めた、意味とは果たして何なのか?第9回小松左京賞受賞作品。
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