残照
ハルキ文庫
今野敏
2003年11月30日
角川春樹事務所
704円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
東京・台場で少年たちのグループの抗争があり、一人が刃物で背中を刺され死亡する事件が起きた。直後に現場で目撃された車から、運転者の風間智也に容疑がかけられた。東京湾臨海署(ベイエリア分署)の安積警部補は、交通機動隊の速水警部補とともに風間を追うが、彼の容疑を否定する速水の言葉に、捜査方針への疑問を感じ始める。やがて、二人の前に、首都高最速の伝説を持つ風間のスカイラインが姿を現すが…。興奮の高速バトルと刑事たちの誇りを描く、傑作警察小説。
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(無題)
カーチェイスは東関東道習志野料金所から始まった。スカイラインGT-Rは150キロの猛スピードで車線変更を繰り返しながら次々と走行車両を抜き去る。違法走行を許さじと迎え撃つのは、交通機動隊ベイエリア分駐所のスープラである。ともに日本を代表するスポーツカーである。性能はほぼ互角、あとは運転技術か。スープラのドライビングシートに座るのは速水。交機 隊小隊長の速水警部補だ。そしてナビシートでシートを握りしめているのが東京湾岸臨海署刑事課強行犯係安積警部補である。GT-Rのドライビングテクニックは図抜けている。交通機動隊のパトカーの追跡を振り切って成田で高速を降りて一般道へ。速水は必死に追跡するが、GT-Rは対向車線を使った追越し、ドリフトを繰り返して筑波山へ。峠バトルへの誘いであった。自ら誘うだけあってGT-Rのドライビングテクニック、度胸ともが速水のそれを上回っていたようだった。ここが本書最大の山場で速水の活躍に胸が躍る。それにしてもGT-Rのドライバーの正体は一体誰なのだろか。 本書は東京湾臨海署安積班シリーズであるが、安積が速水のパトカーに同乗してカーチェイスを繰り広げるのはいかなる理由によるものか。それは次のような経緯からだ。 カラーギャングのリーダーの少年が殺害された。安積はすぐさま現場検証に。背中に残されたナイフの刺し傷が致命傷となったようだ。捜査本部が設置され、手分けして聞き込みに入ると、有力な目撃情報がもたらされた。現場から立ち去る黒の日産スカイラインGT-Rを見かけた、という情報だった。その直後、湾岸線で交通機動隊スープラパトカーがGTRにぶっちぎられた。こうしてGTRのオーナー風間智也が重要参考人として浮上した。風間は一匹狼の走り屋で、ドリフト族、ローリング族の中では有名人であった。 さらに、交通課のスープラ隊隊長の速水が殺人現場に到着した。彼は言う。風間は後ろから人を刺すような奴ではない、と。速水は風間に一目置いていた。これまで何度となく追跡した中で認め合う中になったのだった。その速水も捜査本部に加わる。風間を重要参考人として追う本部と真犯人は別にいると考える安積、速水コンビの二人の戦いが始まる。
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