
あきない世傳金と銀(五)
ハルキ文庫 時代小説文庫
高田郁
2018年2月28日
角川春樹事務所
638円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
大坂天満の呉服商、五鈴屋の六代目店主の女房となった主人公、幸。三兄弟に嫁す、という数奇な運命を受け容れた彼女に、お家さんの富久は五鈴屋の将来を託して息を引き取った。「女名前禁止」の掟のある大坂で、幸は、夫・智蔵の理解のもと、奉公人らと心をひとつにして商いを広げていく。だが、そんな幸たちの前に新たな試練が待ち受けていた。果たして幸は、そして五鈴屋は、あきない戦国時代を勝ち進んでいくことができるのか。話題沸騰の大人気シリーズ待望の第五弾!
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(無題)
原則論を言えば、通貨の価値を担保しているのは信頼である。人々が通貨を価値あるものと信じているから通貨として通用するのである。金銀など貴金属への信頼性は世界共通である。中には貝殻に価値を置く人々もいる。その世界では貝殻が通貨として成立していたのだった。徳川時代、江戸の主要通貨は金で大阪のそれは銀であった。また、補助貨幣として銭も流通していた。このため、これらの通貨を両替する金融機関が発達したのだった。 本書の題名は言うまでもなく「あきない世傳 金と銀」である。ここに込められた作者の想いは、商いとそれを家業とするイエ、さらに江戸、大阪における経済、これらが渾然と溶け合っているのである。 主人公・幸は関西の出であり、大阪天満の地で呉服商い成功の端緒を開いた。そして、江戸進出を目論むのだった。企業規模の拡大を企画した時に必要とされるのはいつの時代も資金である。資本主義が高度に発達した現代であれば、増資や社債の発行あるいは金融機関からの借入と手段は幾重も考えられる。しかし、時代は徳川の世である。手段は自己資金しかありえない。であるならば、家業の呉服商いで際立った成功を収めるより方法がない。アパレル産業と流行は常に一体である。如何にして流行の波にのるか、いや如何にして流行の波を作り出すことができるか。それが成功の鍵である。 幸はアイデアの人である。彼女は帯、それも昼夜帯に着目した。言ってみればリバーシブルの帯である。これ自体画期的なアイデアではない、かつて実用化されその流行が廃れていたものを取り上げたに過ぎない。流行は繰り返す、この鉄則に上手に乗った結果であった。大当たりしたのだった。模倣を許さない五鈴屋オリジナルロゴを染め込んだ五鈴帯である。しかもこの帯を売り出すに当たっての演出が群を抜いていた。幸は稀代の名プロデューサーと言えよう。
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橘薫
ページを繰る手が止まらない
桔梗屋との統合、幸の流産、五鈴帯の流行などなど、今回も緩急つけての展開に目が離せない。 特に、桔梗屋を真澄屋から取り戻し、かつ自店に統合した上で「いずれ桔梗屋の勤め人達が暖簾分けする時は五鈴屋ではなく、桔梗屋の暖簾分けをしたい」と考える幸に涙涙。 ここまで情のある経営者はいないのでは。
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