精神分裂病者と辿る世界
個人療法、家族研究、家族療法を通して
牧原浩
1998年4月30日
金剛出版
5,280円(税込)
医学・薬学・看護学・歯科学
分裂病者への精神療法はどのようにして可能になるのか。著者は、ある分裂病少女との出会いから一貫して、患者の心に深く沈潜しそこに生じる治療者の始源的で微妙な感性体験をも徹底的に思索の対象とすることによって、その問いに答えようとする。同時に家族という土俵に生身で飛び込み、その中で体得された患者家族のさまざまな様態は、日大グループの実証的家族研究の一環として数々の成果をもたらしたが、患者と家族の相互作用やコミュニケーションに注目する著者の臨床的姿勢は自ずと家族療法へと導かれることになる。ミラノ派をモデルに行なわれた著者らの経験は、わが国で数少ない本格的な分裂病に対する家族療法の試みとして貴重な知見を数多く残したが、それらが本書に集成されている。巻末の書き下ろし論文では病者の人間的回復をもたらす要因としての治療者の「技術」と「人間性」を、著者が師と仰ぐ井村恒郎と小川信男の実践の中に跡づけながら、その統合を目指した真摯な探求と苦闘の歴史が克明に披瀝されている。
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