病いのレジリアンス

ナラティヴにおける虚偽主題

大塚 公一郎

2023年4月13日

金剛出版

5,280円(税込)

医学・薬学・看護学・歯科学

著者は,人間学的精神医学や現象学的精神病理学,ラカン派の精神分析,近年注目されているナラティヴ・アプローチの交点に位置づけられるような領域研究と,自らが築きあげてきた精神療法家としての素地を柱とした臨床経験の精華として本書を書き上げた。 各論稿では,クラウス,ヤンツァーリク,ラカン,エランベルジェ,等,独仏の碩学の理論を止揚し,病いに苦しむ人の自己(身体),他者,世界との関係を明らかにしようと試みる。臨床の現場においては,精神病患者の語りに耳を傾け,患者の痛みと苦悩の内的世界を再構築し,現代における統合失調症・うつ病の病理を問うている。 さらに,本書にはいくつもの鍵概念が提示される。ひとつは、患者の〈虚偽主題 Lügenmotiv〉である。これは、うつ病や統合失調症等の病的体験に出現する「うそをついた」といった発言や自らの偽りの自白を指す。次に,具体的実践的な治療論への展開のために「自己回復力」とも大まかに理解される「レジリアンス」という概念を援用する。さらに,本書のタイトルにもなっている「ナラティヴ(語り)」については,物語(story)には病いを癒す力があり、そこでは、病者は物語の語り手としての能動的存在であり、語りと聴取をとおして、病者と聞き手とのあいだで、深い次元での共感と了解にもとづく紐帯が作り出されると述べる。 これら重要概念を解説しながら,著者自身の一貫した臨床研究テーマ「心の病いにとって治療とは何か?」に到達する。それは,物語論(ナラトロジー)の見地から,現象学的精神医学の再生を目論むことにもなるのである。 序 論 伝統型精神療法と大衆型精神療法 □第1部 文化精神医学の諸相 文化の諸相とレジリアンス 病いのレジリアンスの経験から文化を考える 文化と非定型精神病ー祈禱性精神病の生態学的ニッチ 「生きられる身体」に配慮した現代医療におけるナラティヴ・アプローチ  -透析治療のダブルバインドからの脱出の試み ラカン派精神分析とオープンダイアローグの対話をもとめて  -「語り(ナラティヴ)と対話(ダイアローグ)」シンポジウムを終えて □第2部 臨床精神病理学の新次元 統合失調症における虚偽主題 統合失調症者の話と言語活動と自他の成立の困難  -うわさ話の後で出現した「うそ」の要素現象を手がかりにして 慢性統合失調症における生殖・世代主題 虚偽主題と死の主題が出現した重症離人症の一例 メランコリー性不安・罪責体験における法と享楽  -シニフィアンの病いとしての躁うつ病 言葉・心の強さ・生きる力ーオープンキャンパス模擬授業より

本棚に登録&レビュー

みんなの評価(0

--

読みたい

0

未読

0

読書中

0

既読

0

未指定

0

書店員レビュー(0)
書店員レビュー一覧

みんなのレビュー

レビューはありません

Google Play で手に入れよう
Google Play で手に入れよう
キーワードは1文字以上で検索してください