世界経済の大潮流

経済学の常識をくつがえす資本主義の大転換

atプラス叢書

水野和夫

2012年5月31日

太田出版

1,760円(税込)

ビジネス・経済・就職

終わりなき危機からどう離脱するのか!?出口の見えないデフレ、相次ぐ国家財政破綻、連続する経済危機…。資本主義のかつてない変化を解き明かし、未来の経済を構想する。

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4.1 2018年01月29日

私が敬愛して止まない神野直彦先生が、信頼を寄せるエコノミストであるから、私は水野和夫さんを全面的に信頼している。何とも乱暴なロジックであるが、本書を通読してみれば、数百年の歴史を振り返るスケールの大きさと、独創的な理論の魅力に気づくはずだ。 かつて社会学者の清水幾太郎は、「過去を見る眼が新しくならない限り、現在の新しさは本当に掴めないのである」と述べたことがある。将来を見通すには、固定観念を排して歴史を刷新しなければならない。本書は、現代のグローバル化現象を鋭利に解剖してきた著者の、理論的エッセンスを伝える好著である。 本書における著者の理論のポイントは「利子率革命」。現在の低金利は、400年かけて先進国での投資が一巡化しためである、というもの。イギリス・米国という海を支配する国から、ユーラシア(EU、中国、ロシア、インドなど)の陸の国へと支配が戻る過程とも述べている。 人類の歴史の中でこれほどまでの超低金利になったのは、古代ローマ帝国と16世紀初頭のイタリア・ジェノバ、そして97年以降の日本しか事例がない。この意味で、現在起きている二十一世紀の利子率革命は、人類の歴史上三度しか起こらなかった大きな歴史の断絶である。 これだけ金利が低いと、資本家は10年のリスクをとって実物投資をしても、リターンは1%以下にしかならない。企業は最低限の資本蓄積すらもできない。国民全体の資産が豊かになった結果、資本の希少性がなくなり、「資本家の終わり」の時代に突入した。資本主義の成熟とはつまり、資本家や投資家が儲けることのできない時代の到来である。 それでも資本家たちは儲けたい。だから国家を利用する。バブルを中途半端に弾けさせずに、国家に救済してもらわねばならない水準にまで膨らませる。あるいは、資源価格高騰の下で、徹底的な賃金カットでもって収益を確保する。資本家たちは利潤率の低下に直面して暴走し始めた、というのが本書の時代診断だ。 頑張れば成長できるというのは、先進国の長期金利がピークを迎えた1974年で終わっている。 日本のデフレの真因を「交易条件の悪化」の影響とみる視点も特徴的。日本における労働者の賃金の減少は、原油価格の高騰によって説明できるという分析だ。そしてその解決には、利上げと円高が必要だと述べる。 需給ギャップの悪化によるデフレは、限界利益と売上高がともに右下がりになっていた2002年まで。しかし、2003年以降は、売上高は増えているにもかかわらず、限界利益が減り続けている。ここから引き起こされるデフレに対する処方箋としては、伝統的な手法は通用しない。 「デフレから脱却するには、原油価格が下がればいい」ことになる。ですから、日銀は利上げをして、円高にすればいい。原油を少しでも安く買えるようにするためには、2002年から日銀は利上げをしておかなければいけなかった。それを量的緩和でますます円安にして、100円で買える原油をわざわざ130円で買わせた。 今後もっと原油価格が高騰すれば、海外の穀物を太平洋を横断して莫大な移動コストをかけてまで輸入することは成り立たなくなる。そうすると、ポスト近代というのは動かない世界、「定住」ということがキーワードになるはずた。 グローバル化を推し進める原動力は、新興国の人々が豊かになりたいという欲求であり、先進国の成熟化による極端なまでの低利潤率の長期化である。 グローバリゼーションの世紀は80年となり、現在、ようやく中間地点に達したことになる。 自国民から「略奪」して、すなわち家を購入して中産階級になるという夢を奪ってまで利潤率を上げようとした段階で、資本は国家・国民に対する離縁状を突きつけたことになる。所得の二極化は最終的には、近代国家の基盤をなす中産階級を没落させ、近代社会を崩壊の危機に陥れることになるのだ。 先進国と新興国の市場が一体化する過程で、供給に制約のある資源・食料価格は「長い十六世紀」がそうだったように、高騰する。 資源高で所得が海外流出する分を輸出価格を引き上げるか、エネルギーを国産化することをしない限り、生産(GDP)以下にしか所得(GDI)が増えないということを認識すべき。 資本は今後分散して、世界的な超低金利の下で新興諸国の経済が成熟するまでの約20年間、グローバル化傾向が続くだろう。日本社会では現在、大企業と中小企業のあいだの賃金格差が広がっているが、この格差を是正するためには、なによりも中小企業のグローバル化が課題であると著者は考える。 下からのグローバル化を促すためには「東アジア共同体」の構想が必要で、国民国家の枠組みで考える発想は行き詰まる。超低金利時代を覚悟しつつも、国家を超える経済共同体の取り組みが求められている、というのが著者の見立てだ。

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