臼田亜浪の百句
西池冬扇
2022年12月12日
ふらんす堂
1,650円(税込)
人文・思想・社会
臼田亞浪という俳人の特質をひとことで表わすとすると「寂しさの旅人」ということになるでしょうか。明治の終わりから大正期にかけては短歌や詩の世界では、若山牧水、前田夕暮、山村暮鳥などが活躍しましたが、いずれも自然や旅を愛し、薄淡い光と寂しさの中に人間のなんたるかを見つめようとしていた詩人たちです。臼田亞浪はそのようなトーンの作品を作った俳人の典型だと思います。その「寂しさ」は明治という一つの時代が終わり、次の社会への希望というより不安が増大したときのいわば時代が生んだ精神風土のようなものではないでしょうか。その時代の多くの詩人の魂が敏感に感じた焦燥感が、諦念を秘めた「寂しさ」という形で表れたものではないでしょうか。現代もまた大きな時代の曲がり角にあると思います。過渡期という時代を過ごした一人の俳人の生き様を俳句から感じていただければと思います。
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