「戦争孤児」を生きる

ライフストーリー/沈黙/語りの歴史社会学

土屋 敦

2021年11月25日

青弓社

2,640円(税込)

人文・思想・社会

長く沈黙してきた当事者たちにインタビューをして、浮浪生活の実態や親戚宅での冷酷な処遇、教育・就職の困難など、これまでの歩みを浮き彫りにする。「戦争で親を失った子どもたち」が、抱え続けてきたスティグマとどう向き合い、自らを語るのかを検証する。 はじめに 第1章 問題の所在  1 本書の視座  2 「戦争孤児」たちがたどった道程  3 研究視座ーーライフストーリー研究と「語りの産出/不在」を分析すること  4 理論枠組み  5 調査対象  6 本書の構成 第2章 「戦災孤児」のメディア表象ーー敗戦後日本の自画像としての  1 「戦災孤児」、浮浪児の飢餓と貧困  2 「親がない子ども」をめぐる新聞記事件数の推移  3 「慈しむべき哀れな孤児像」  4 「不良化し犯罪化する危険な浮浪児像」  5 「平和への祈願としての原爆孤児像」の形成  6 「戦災孤児」たちの「親探し運動」と「親子再会の物語」 第3章 語りの制約ーー沈黙の背後にあるもの  1 調査対象者の生活史と出身階層  2 なぜ自分の「戦災孤児」経験を語れない/語れなかったのか  3 「戦災孤児」だったことの沈黙  4 語り始める契機 第4章 社会的信用の失墜と孤児たちの経験ーー浮浪生活、施設生活、親戚宅での生活をどのように語るのか  1 「戦災孤児」というカテゴリーを付与されること  2 疎開経験、空襲経験、親の死を知る  3 浮浪生活(に至った経緯)/施設経験をどのように語るのか  4 里親宅/親戚宅での生活をどのように語るかーーいちばんつらい時期として  5 自殺を考える  6 他家での家族関係で先鋭化するスティグマ 第5章 「戦災孤児」を生きることーー学校生活、就職、そしてその後の人生  1 就学/進学  2 就職  3 体の不調  4 「家族」をつくること、「子ども」をもうけることへの願いと拒否感  5 その後の人生 第6章 「戦災孤児」から「戦争孤児」へーーカミングアウトと裁判  1 アイデンティティの承認をめぐる闘争  2 語りだすきっかけ  3 「戦災孤児」から「戦争孤児」へ  4 信念  5 ライフストーリー産出をめぐる政治と闘争 終 章 沈黙と語りの歴史社会学  1 社会的カテゴリーとしての「戦災孤児」「戦争孤児」  2 承認をめぐる闘争とループ効果  3 戦争社会学との接点  4 「語りの不在」自体を問題にする視座  5 戦争の記録、記憶、語りの継承  6 東日本大震災の経験、子どもたちの脱スティグマ化のために 参考文献 あとがき

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