
日本企業のアジア・バリューチェーン戦略
鈴木洋太郎
2015年3月6日
新評論
2,530円(税込)
ビジネス・経済・就職
日本企業のアジアへの進出先は、かつては中国に集中していたが、近年ではインドネシア、ベトナム、カンボジア、ミャンマーへと広域化し、日本企業は難しい「選択」を求められるようになってきた。つまり、アジアの多様な国・地域の立地環境上の魅力とリスクを把握しながら、どこの国・地域にどのような事業をどのように展開するのかという立地戦略のストーリーを構想することが重要となってきたわけである。この成功ストーリーの構築に際しては、以下に挙げる三つのポイントを考えることが不可欠となる。 第一は、「市場開拓の場所としてのアジア」である。日本企業立地先としてのアジア地域は、その経済成長に伴って、コスト削減の場所というよりも市場開拓の場所になってきている。アジア地域は賃金上昇のリスクがあり、このリスク軽減のためにも現地の市場開拓が重要と言える。 第二は、「アジアにおけるバリューチェーンの現地化」である。進出先では、バリューチェーンの視点から現地化をどのように達成させるべきかを検討することが重要となる。本書では、企業内および企業間におけるバリュー(価値)を生み出す「事業活動のつながり」をバリューチェーンと定義しており、原材料の調達や製品の出荷といったサプライチェーン(供給網)を中心にとらえつつも、物流面以外の様々な取引関係も考慮に入れている。 第三は、「現地化する日本企業のDNA」である。現地での取引が中心になり、現地人材が事業活動を担うようになっても、日系現地法人は日本企業としてのアイデンティティを持続するべきであろう。そのためには、現地化する日本企業のDNAとは何かを考えることが重要となる。 本書では、以上の三つのポイントを踏まえながら、日本企業立地先としてのアジアの魅力とリスクの観点から、日本企業のアジア進出戦略のあり方を探っている。(すずき・ようたろう)
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