
経済人間
ネオリベラリズムの根底
クリスチャン・ラヴァル / 菊地昌実
2015年7月23日
新評論
4,180円(税込)
ビジネス・経済・就職
われわれは今、どこへ向かおうとしているのか。格差がますます広がり、生きにくさを感じる人がどんどん増える状況の中で、誰しもそう考えるだろう。もちろん、これは日本だけの問題ではない。欧米のどの国も、同じ難問を抱えている。 著者は、このような世界の現状に至った道筋を丹念に辿り、人類の歴史が市場優先を起点にしてネオリベラリズム(新自由主義)万能社会へと変貌していく過程を追って、問題の本質に迫る。 古代西洋以来、利益というものは道徳的に忌み嫌われてきたが、一六世紀末、イタリア社会で人間にとっての利益の正当性が認められ、利子を取ることを禁じていた法王庁も自己都合で黙認するようになる。それまでキリスト教的道徳に則って生きてきた個人は、次第におのれの欲望を満たすために、合理的に計算して行動するようになっていく。ジョン・ロック、デイヴィッド・ヒューム、C・A・エルヴェシウス、アダム・スミス、ジェレミ・ベンサムなど、主に英仏の思想家、哲学者、経済学者の著書を援用して、著者は<経済人間>の生成の跡を明らかにする。そして、経済の発展につれて、<最大多数の最大幸福>というベンサムの原理から逸脱し、ネオリベ社会が形成されていく過程を丹念に辿る。 著者によれば、人類は今大きな転換点にある。変化は単に経済面ではなく、社会、文化、政治、教育のあらゆる面にわたる。問われているのは、新たな行動の規範、生き方そのものである。新しい方向を見出すには、まず過去に歩んだ道をしっかりと見据える必要がある。 明治以降、西洋の後を追い続けてきた日本は、世界的な困難の中にあって、今また、ひたすらアメリカに追随することしか考えていないが、それで良いのか。現代の核心に迫る本書の意味は大きい。
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