だれもが〈科学者〉になれる!

探究力を育む理科の授業

チャールズ・ピアス / 門倉正美 / 白鳥信義 / 山崎敬人 / 吉田新一郎

2020年1月6日

新評論

2,640円(税込)

人文・思想・社会

「子どもは本来好奇心が旺盛で、自ら問い、探究する科学者である」--これが著者ピアスの信念です。それにしては、多くの理科のクラスで生徒たちがあまり楽しそうでないのはどううしてでしょう? 著者によればその理由は、学校の授業が生徒の自発的な問いを育むことなく、もっぱら問いと答えをセットで与える(=強制的に覚えさせる)ものに終始しているからです。そこで著者は、自身が担当する理科のクラスで、生徒が自発的に問いを立て、その答えを科学的に探究するように促し続ける「探究理科」(探究活動中心の理科教育)を実践します。  本書における「探究理科」は、「ビーズの色はなぜ変わるのか?」という問いからはじまります。そこから「発見ボックス」に入れたさまざまなモノを発見したり、野外授業で小動物の骨に出合ったり、科学読み物を参考にエコロジカル・ミステリーを書いたりといった多様な活動を経て、自らの探究成果をちょうど学会発表のごとく、「子ども探究大会」で発表してクライマックスを迎えます。こうした一年間の授業風景が、綿密な授業計画や授業方法、使用するワークシートなどの紹介も含めて活き活きと描き出されます。  とくに興味深いのは、「探究理科」では、科学的活動が「読む・書く・聞く・話す」という言語活動と有機的に関連づけられているところです。科学のおおもとには、先人の研究成果を知り、仲間と協働するといったコミュニケーションがあるからです。また、生徒の探究心を育む科学絵本や科学読み物が授業に豊富に取り入れられる点も魅力的です。  日本の「新学習指導要領」では、「主体的・対話的で深い学び」が強調されています。しかし、そうした学びをどのように養うかについての具体的な提案は乏しいようです。その点本書には、アクティブな探究心を触発する実践的なヒントが満載です。(かどくら・まさみ)

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