改訂新装版 テレジンの子どもたちから

ナチスに隠れて出された雑誌『VEDEM』より

林幸子

2021年6月25日

新評論

2,640円(税込)

人文・思想・社会

20年前、チェコの「テレジン・ユダヤ人強制収容所」の中でナチスに隠れて子どもたちが出していた雑誌『VEDEM(ヴェデム)』は、日本ではまったくと言っていいほど知られていませんでした。それを知って日本で本書旧版を出版してからの20年の間に起こった出来事は奇跡の連続でした。  『VEDEM』の編集長だったギンズ君が残した60年前の日記や絵が発見され、妹さんの手で出版されたり、ギンズ君の顔がチェコで切手になったり(詳細は本書で)、副編集長だったコトウチュさんと寝起きを共にしていたブラディさんの妹さんのスーツケースが日本に渡ったエピソードが本になったり、収容所内で55回も上演された子どものオペラ『ブルンジバール』の日本語公演が東京で実現したりしました。そして、悲しいことにコトウチュさん、ブラディさんが亡くなられたことも、20年という歳月を感じさせます。もっとお話をお聞きしておけばよかった、と後悔するばかりです。  しかし、『VEDEM』を収容所内の土塁に埋めて、ナチスから守ってくださったタウシクさんは、90歳で今もご健在です。私は5年ほど前にフロリダのご自宅に3泊し、テレジンの1号室の仲間たちと作った『シュキド共和国』という歌をタウシクさんに歌っていただきました。もちろん、その様子をビデオに録画してきました。  改訂新版となる本書では、この20年間に起こったこれらの出来事も紹介しています。テレジンの子どもたちが望んだ民族差別のない世界平和は、まだ実現していません。悲しいことに、ナチスが示した非人間性は、今もあらゆる場所に潜んでいるようです。雑誌『VEDEM』で人間の心の強さや優しさを確認し、平和で誰もが自由に生活できる世界を創るため、私も微力ながら努力を続けていきたいです。(はやし・さちこ)

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