潜水艦の戦う技術
現代の「海の忍者」-その実際に迫る
サイエンス・アイ新書
山内敏秀
2015年6月17日
SBクリエイティブ
1,210円(税込)
科学・技術 / 新書
国土を海に囲まれている日本は、輸出入の99.7%を船に頼っており、海の自由な利用の可否は国の存立にかかわる。日本が海を自由に利用することを邪魔しようとしたり、日本への侵略を企てるものによる海の利用を拒否する役割を果たす潜水艦。海中に潜んで敵を討つ、その戦術の秘密。
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(無題)
日本人は防衛問題と正面から向き合う事を避けているように見える。ましてや、軍事や軍備となると、一部のオタクの専売特許と化している。 それではならじと、軍事に関する知識を増やそうと思って選んだ本であった。そんな僕の思いと著者の意図には若干のすれ違いがあったようだ。著者は海上自衛隊の潜水艦「せとしお」の元艦長であり、その経験に基づいて本書を著したものであるが、その本意は潜水艦乗りを目指す若者の獲得にあるようだった。 ところで潜水艦は第二次大戦以降、魚雷やソナー、各種電子機器、通信装置の性能向上、さらに原子力機関の登場により画期的に性能が向上し、現在では強力な戦闘力を持つ最強の軍艦として、かつての戦艦に匹敵する地位を獲得した。 一般的に「攻撃力としてどのような武器体系が装備されているか」が軍艦としての能力評価の基準であるが、潜水艦の場合はこれに加えて「隠密性」という独自の能力を抜きには語れない。その特性ゆえに時として空母を中心とする戦隊とただ一隻で対峙できるのだ。だから、潜水艦は海軍の究極の非対称戦を実現できる。 ところで、その隠密性を実現するために潜水艦は、蓄電池を動力源としている。したがって、いつかは蓄電池を充電しなければならない。給気筒を水面に出して空気を取り入れ、ディーゼル・エンジンを起動して充電する。その際、給気筒が敵のレーダーに見つかり易いというリスクがある。それ以上に問題なのは、ディーゼル・エンジンの轟音が水中に伝わっていくことだ。潜水艦の隠密性にとって大敵は音。海の中には電波も光もほとんど届かないので、潜水艦を見つけようとすれば、音に頼るほかない。このため、潜水艦は音を出すことを極度に嫌う。だから艦内の床にはカーペットが敷かれ、乗員はスニーカーだ。 このように本書は潜水艦の歴史に始まって、その仕組みや航法、戦闘能力まで一通りの事は触れられている。潜水艦を知るには好書と言って良いだろう。
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