いつまでもショパン
宝島社文庫
中山七里
2014年1月31日
宝島社
704円(税込)
小説・エッセイ / 文庫
難聴を患いながらも、ショパン・コンクールに出場するため、ポーランドに向かったピアニスト・岬洋介。しかし、コンクール会場で刑事が何者かに殺害され、遺体の手の指十本がすべて切り取られるという奇怪な事件に遭遇する。さらには会場周辺でテロが頻発し、世界的テロリスト・通称“ピアニスト”がワルシャワに潜伏しているという情報を得る。岬は、鋭い洞察力で殺害現場を検証していく!
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ピアノの最高峰
ショパンは特別なのだ。数多のピアニストにとって。 そしてこの国に生まれた人にとって。】 世界にショパンの音楽だけが存在しているのではない。 ベートーヴェンもモーツァルトも同様に素晴らしい。 しかし。 ショパンを完璧に弾くピアニストは如何なる曲も完璧に弾ける。 ショパンを聴くまでその才能に評価を下すのは待て、と。 ショパンの曲のみを審査対象とするショパンコンクール。 入賞がピアニストにとって最高の権威であるのはそういう理由だ。 ショパンコンクールでは繰り返される命題がある。 それは ”ポーランドのショパン” なのかどうか。 どれだけ技術に秀でて、 どれだけ表現が豊かであったとしても。 ポーランドが解釈するショパンでなければ、 その栄冠を勝ち取ることはできない。 ポーランドのショパン。 正しいショパン。 ショパンらしいショパン。 ポーランドは何度も迫害を受けながら、その度に雄々しく立ち上がってきた民族だ。 文化も都市も完膚なきまでに破壊され、それでも粘り強く再生してきた民族だ。 それゆえ〈英雄〉とは、ポーランドの国民一人一人を指す。 音楽には力がある。 ナチスによって国土が蹂躙された時も、 破壊され尽くした街を復興させた時にも、 絶えず我々の胸の裡にはショパンの旋律が響いていた。 それこそが我々を希望へと突き動かす槌音だった。 「アラーアクバル!(アラーは偉大なり)」 次の瞬間、男の体が爆発した。 人間の花火に見えた。 爆風で何人もの観客が後方に吹き飛ばされた。 ワルシャワの十月は音楽の季節かと思っていたが。 ワルシャワの十月は血と硝煙の季節になっていた。 テロの恐怖のなか、続行されるショパンコンクール。 音楽には力がある。 テロリストが振るう暴力とは対極にある同等の力が。 ショパンコンクールに参加する意味。 欲しいものはたくさんある。 名誉と称賛と、達成感。 でも。 名誉は虚栄なのかもしれない。 称賛は無意味なのかもしれない。 達成感は錯覚かもしれない。 ならば今、彼が本当に望むものとは。
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