交渉に生を賭ける

東アフリカ牧畜民の生活世界

生態人類学は挑む MONOGRAPH 1

太田 至

2021年2月19日

京都大学学術出版会

3,300円(税込)

人文・思想・社会

ケニア北西部に住むトゥルカナ人は、日本人なら規則や組織の論理に従って決める問題を、すべて「対面的な交渉」によって解決する。私たちの「贈与」「互酬」「恥」の感覚をくつがえす、彼らの強烈な交渉と「ねだり」の攻勢には、「こちらの事情も察してくれ」という甘えは通用しない。ともに納得できる決着を実現することに、誰もが全身全霊で打ち込む社会。彼らの誇り高い生き方は、自分に自信が持てない私たちをゆさぶる。 序 章 1 家畜の放牧と個体識別ーー牧畜社会の生態人類学 2 牧畜社会の魅カーー「ねだり」と相互交渉の人類学 3 トゥルカナの人びとから学んだことーー彼らが教えてくれたこと 4 本書の構成 第1章 トゥルカナの社会と歴史 1 牧畜生活と社会のしくみ 2 トゥルカナの歴史 第2章 家畜の分類と個体識別 1 人びとは家畜をどのように認知し管理しているのか 2 家畜群の構造的な把握法 3 家畜に名前をつける 4 家畜の個体識別 5 家畜が「独自な個体」として扱われることの意味ーー歴史の結節点 第3章 家畜の贈与と交換 1 市場経済と貨幣の浸透 2 家畜とモノの交換 3 「消費するための家畜交換」とは 4 「消費するための家畜交換」における支払いの交渉 5 「消費するための家畜交換」をめぐる語彙 6 「消費するための家畜交換」にかかわる当事者の人格的な要素 7 「家畜群を増殖させるための交換」とは 8 家畜交換の動機や目的の具体性 第4章 家畜に対する権利 1 所有とはどのような事態か 2 財としての家畜ーー牧畜社会における諸権利に関する従来の研究 3 「基本家族」における家畜に対する権利ーー「主管者」の女性 4 息子の成長と家畜に対する権利 5 家畜に対する「権利の束」 6 「持ち駒」を駆使した折衝 7 ラクダの信託と所有ーーレンディーレとガブラの社会 8 「権利の束」再考 第5章 婚資の交渉 1 婚資の支払いと婚姻の成立 2 婚姻の機会に授受される家畜の種類と頭数、調達方法 3 婚資交渉の事例 4 婚資の交渉をする人びとのふるまいーー真剣勝負と気前のよさ 第6章 「ねだり」と対面的な相互交渉 1 「ねだり」というテーマ 2 トゥルカナの人の「ねだり」に魅せられ、悩まされた研究者たち 3 「ねだり」の事例 4 「ねだり」をどのように理解すべきか 終 章 1 対面的な相互行為に賭ける人びと 2 「他者」と〈わたし〉の「かけがえのなさ」 謝 辞 参考文献 索 引

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