
文化冷戦と科学技術
アメリカの対外情報プログラムとアジア
土屋 由香
2021年3月4日
京都大学学術出版会
3,520円(税込)
科学・技術
私たちが心ときめかせ,あるいは切望した科学技術。原爆から「平和の火」に変えられた原子力,そして原子力に暗雲がかかると,憧れの対象は月着陸のドラマとなり,あるいは先進の医療となった。第三世界の人々の夢も,そうした憧れに駆動された。しかしそれらの夢は,実は冷戦の時代,東西陣営による「世界の心を勝ち取る戦い」として科学が利用された結果と言ってよい。雑誌の表紙を飾る,宇宙飛行士とその妻の表情や服装さえも「心を勝ち取る」ために演出された,文化冷戦の実態に鋭く迫る。 主要略語一覧 序章 1 科学技術と文化冷戦 2 広報外交・情報政策などの概念整理と担当機関 3 「フォーリン・アトムズ・フォー・ピース」 4 本書の構成と各章の内容 第I部 文化冷戦と核・原子力 第1章 文化冷戦と原子科学者たちーー「文化自由会議」と『原子科学者会報』 1 シカゴの科学者たちと『原子科学者会報』の創刊 2 文化自由会議との出会い 3 ラビノウィッチ、シルズ、文化自由会議、『原子科学者会報』をつなぐ共通項 4 『原子科学者会報』における「科学者の役割」と「科学の自由」 第2章 「フォーリン・アトムズ・フォー・ピース」と研究用原子炉の輸出 1 原子力技術援助の背景 2 南ヴェトナム 3 日本 4 ビルマ 第3章 原子力の留学生たちーーアルゴンヌ国際原子力科学技術学校 1 アルゴンヌ国際原子力科学技術学校(ISNSE)の設立 2 原子力の「留学生」たちの経験 3 留学生を題材とした対外情報プログラム 第4章 太平洋の核実験をめぐる逆説の対外情報プログラム 1 レッドウィング作戦の開始と補償問題 2 「クリーン・ボム」(きれいな爆弾)をめぐる対外情報プログラムとその挫折 3 ハードタック作戦と「拓洋」「さつま」被ばく事件 4 核実験禁止要求と賠償請求との関係 5 抗議船に関する情報統制 第II部 新たな対外情報プログラムの展開 第5章 「アトムズ・フォー・ピース」から「サイエンス・フォー・ピース」ヘ 1 スプートニク・ショック後の科学技術政策に関する政府機構改革 2 対外情報プログラムにおける科学技術の新たな重要性 3 変革期の対外情報プログラム 第6章 「ホープ計画」に見る医療援助政策 1 文化冷戦の舞台としての医療援助ーーマラリア撲滅キャンペーンを事例として 2 医療援助・対外情報プログラム・民間ボランティア活動をめぐる議論 3 ホープ計画の実施内容 4 ホープ号のインドネシア訪問 5 ホープ号の南ヴェトナム訪問 第7章 新たな対外情報プログラムとしての宇宙開発 1 宇宙開発と情報政策 2 NASAとUSIAの協力 3 USIS 映画と展示会 おわりに 参考文献一覧 あとがき 索引
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