
文学理論入門
論理と国語と文学と
疋田 雅昭
2021年11月15日
ひつじ書房
2,420円(税込)
人文・思想・社会
高校生の現代文が、文学的文章と論理的文章に「分離」されることとなった。この政策が単なる「分離」ではなく「隔離」であることは明らかだが、我々はこの「分離」を逆手にとって、新たな国語教育の可能性を模索してゆかねばならない。文学理論と文学教育をどう切り結ぶのか。そして、文学的文章と論理的文章の教育を有機的に組み合わせてゆくには、何が必要なのか。専門的知から様々な領域に「接続」するための紐帯を提供する、新しい文学理論入門。 まえがき 第一章 「文学理論」と「国語」の接点をめぐって いくつか議論の前提としての(語句)定義 1 国語教育学と文学 2 「論理」的であるという陥穽 3 インプット(リーディング)偏重の「国語」教育 4 文学と国語教育の蜜月を引き裂いたテクスト論 5 「伝わる」という考え方の陥穽 6 型と自由 7 文法とは 8 言葉を学ぶことが役に立つとは 9 分野同士の紐帯 10 近代文学研究の短期的有用性 第二章 表現あるいは構造、それ自体への注目 文学の文法の見取り図 1 文学の文法を学ぶ前に 2 表層分析ーニュークリティシズム 結語ー「文学理論」から「国語」の実践へ/ブックガイド 3 深層の構造ー構造主義解析 「要素」と「全体」/「構造」を物語分析として考える/物語の構造/物語の型/要素を支えるものー「関係性」の諸相/何からどのように要素抽出するかー場所・場面/ブックガイド 4 表層分析と深層の間にーナラトロジー 「語り手」という概念規定/「顕在的語り手」と「潜在的語り手」/語りの位置/事後的な語りと現在進行的な語り/「物語内容」の時間/視点人物と視点位置/語り手からの距離感/描写と介入度/語り手の時間操作/語り手と読者の共犯/語り手の仕掛けるレトリックーテマティズムを例に/「世界観」=設定という問題系/構造から言えることー可視化のその先/読み替えの面白さと政治的正しさ/結語ー「文学理論」から「国語」の実践へ/ブックガイド 5 読者への注目 記号と空白/同時代言説から小文字の歴史へ/読者の難しさから読者の創造へ/期待の地平と解釈共同体/内包された読者/読書行為論/結語ー「読者論」と「国語」の実践/ブックガイド 第三章 理論から実践へ 1 テクスト論の実践のために 2 テクスト論アラカルト 言語論(記号論)/言語論ー比喩・ヴィトゲンシュタイン・コミュニケーション/精神分析批評/テクスト論の射程は広い 3 実践練習のために チェックシートによる「予習」の実践/表記の検討1-「文体」/表記の検討2-「タイトル」/表記の検 討3-「解釈出来ないモノ・コト」/構造の検討/ナラシオン(語り手の操作)の検討 4 小文字の歴史を調べる 笙野頼子「なにもしてない」/笙野頼子「二百回忌」/笙野頼子「タイムスリップ・コンビナート」/多和田葉子「犬婿入り」/小山田浩子「工場」/小山田浩子「穴」/青山七恵「ひとり日和」/中上健次「十九歳の地図」/藤原智美「運転士」/長嶋有「猛スピードで母は」/絲山秋子「沖で待つ」/楊逸「ワンちゃん」/松浦寿輝「花腐し」 巻末付録チェックシート 索引
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