
植民地朝鮮の民族宗教
国家神道体制下の「類似宗教」論
青野 正明
2018年11月22日
法藏館
4,180円(税込)
人文・思想・社会
植民地朝鮮の民族宗教特有の終末思想を、「帝国」からの独立を志向する民族主義的なナショナリズムの受け皿として分析。「帝国」のナショナリズムとしての「国家神道」と、それにもとづく国民教化のシステムが植民地に移植される中、相反する位置にあった朝鮮の民族宗教はどのような位置に置かれたのか。農村社会の変動や自治運動の展開、著者による「帝国神道」論に即して考察する。 ************* 朝鮮の土着文化としては巫俗(ふぞく)信仰に加えて、弥勒の下生(げしょう)信仰に代表されるような終末思想が特徴的である。(中略)一九二〇年代において農村社会の変動にともない土着文化も変容したため、民族宗教からは一般的に私的領域=日常で巫俗的要素が多く見いだされる一方で、植民地支配に抵抗したり独立を目指して公的領域に浮上しようとする傾向も特徴となる。そのような時、その作用には「地上天国」建設や予言の地のような終末思想が大きく働いていて、それが民族主義的ナショナリズムの受け皿になっていると私は考えている。たとえば、民族宗教の中にはこの終末思想にもとづき、農村において「地上天国」建設を目指すような宗教運動を展開する団体も現れるのである。 この「地上天国」建設のような終末思想が近代的な民族主義的ナショナリズムへと発展し、日本からの独立を志向する内容へと展開していったため、とくに一九三〇年代半ば以降に本国政府および朝鮮総督府が植え付けようとした天皇制イデオロギー(国体論)にもとづく多民族帝国主義的ナショナリズム(帝国日本において多民族を抱え込んだ中で日本人が頂点となる国民主義)と真っ向から対立することになる。(本書「序 章」より) *************
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