愛を紡ぐ糸

ロンドンの美術館でタペストリー修復の仕事をしているカムのもとに出張の依頼があった。依頼主はマシュー・コリガンー。カリブ海の島ハルシオン・ケイをカムの祖父からだまし取った悪人だ。ただし、すべては生まれる前の出来事なので、あまり実感がない。今は、幼いときから聞かされ続けた美しい島をこの目で見たかった。祖父とは姓も違うし、わたしの素性を見破られるはずはない。カムは母が止めるのも無視して、一路カリブ海を目指した。ところが、ハルシオン・ケイへ向かう船着き場でさんざん待たされ、そのあげくに現れたのは、コリガンの雇人らしき横柄な若い男。彼の視線は灼熱の太陽のように、カムの体にまつわりついた。